「さて、鳶慈。よく来たな。我々はお前を歓迎するぞ」
鴇慈が出て行ったのを見届けてから、迢が口を開く。
「本当はココで団長からの挨拶があるのだが…」
何故か小さな椅子が置いてある団長の机らしき所に手を掛け顔を曇らせる迢に、鳶慈は首を傾げる。
「駄目なんですか?」
「いや、心の準備をしておいた方が良いと思ってな」
そんな迢の言葉に、怪しげなツッコミが入った。
「こらこら、失礼な事を言うものじゃない」
「え?」
鳶慈は目を丸くする。
――今、何処から声が聞こえたんだろう?
迢は観念したように言った。
「…わかりました。では団長、ご挨拶願えますか?」
すると、机の上にあった小さな椅子がこちらを向き、これまた怪しげな生物が姿を見せた。
「やあ、鳶慈。よく来たね。我々は君を歓迎するよ」
さっき迢が言った事をそのまま自分の言葉にして言う生物を呆然と見ながら、鳶慈は迢に問い掛けた。
「あの、団長さんは何処ですか?」
迢は、やっぱり…と言ったように頭を抱えた。
「なかなか失礼なヤツだな、君も」
小さな椅子に座った怪しい生物が溜息混じりに言う。
「す、すみません」
――まさかおもちゃだと思ったなんて言えないなぁ…。
鳶慈は密かにそんな事を考える。
丸い頭にとってつけたような体。
表情が豊かなのか乏しいのか良くわからない顔。
なんだか微妙に困ってるっぽい感じ。
しかも全身で25〜6cm程しかない真っ白な…生物(??)。
鳶慈はまさか団長がこんな姿をしているとは思いもしなかったのだ。
というか、もし少しでも考えていたなら鳶慈の頭の中はちょっとおかしい気もするが。
「無論コレは仮の姿だ。本当はこんな姿ではないから安心してくれ」
ふんふんと頷きながら団長(代理)である生物は言った。
そこに迢が軽く付け足す。
「慣れないうちは大変だろうが、コレを『団長』と呼ぶように」
「迢!仮にも団長に『コレ』は無いだろう!!」
「いえ、ほかに表現のしようが無くて…」
「せめて『この方』とか『こちら』とか…」
「はいはい…」
そう言って迢はボソッと鳶慈に耳打ちした。
「付き合い方は簡単だ。軽く流せ」
「は、はあ…」
その様子を疑わしそうに見ていた団長(代理生物)は、コホンと咳払いをして真面目な顔(??)になった。
「さて、鳶慈。君は鴇慈の弟という事で、こちらとしても相当な戦力として期待をしている」
鳶慈は、驚いた。
「ちょ、ちょっと待ってください!僕は…」
「話は最後まで聞くように」
「は…はい…」
ピシャリと言われて黙ったけれど、内心鳶慈はドキドキしていた。
――僕、兄さんと違って運動神経が良いわけじゃないんだけど…。
というか、むしろ平均よりやや低いくらいで。
「でもまあ、うちは本人の希望を優先する所だから、君の得意とする所を知りたい」
そう言われて鳶慈はちょっとホッとした。
「あの、僕はあまり戦ったりとか得意じゃないのでそういうの以外が…」
――かといって、戦術練るのが得意とかでもないけど。
「むむ、成る程?」
団長(代理生物)は右の手(多分)で顎の辺りをぴしぴしと叩いた後ずばり言った。
「よし、君は団長補佐ね!!」
「ええええ!?」
――いきなり重要そうなんだけど!!
戦闘とは縁がなさそうだがしかし。
――しかもそれって本人の希望なの!?
鳶慈はすがるように迢の方を見たが、迢は団長(代理生物)の方を見ていた。
「…ということは?」
「うん、迢、今までご苦労だったね。これからは鳶慈に任せるよ」
「わかりました」
迢は、目一杯の笑顔で鳶慈の方を向いて言った。
「鳶慈、俺の分まで頑張ってくれよ」
「え?え?そんな迢さん!」
「さあ、これから団の中を軽く案内して、その後補佐に就任だな」
「ほ、ホントにそれで決定なんですか!?」
非常にアバウトな役割分担である。
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