ピンク髪の獣人の少女が、金髪の少年に話し掛ける。
「翔汰(しょうた)君、翔汰君!」
それに気付いた少年――翔汰は少女の方を振り返った。
「鈴琶(れいは)、どうしたんだ?」
「あのね、朝会で言ってた鴇慈さんの弟さん、さっき廊下で見かけたよ」
鈴琶の言葉に、遠くにいたオレンジ髪に鉢巻というスタイルの少年も反応した。
「何だって!?本当か、鈴琶!!」
遠いのに、声は近い。
それだけ大きな声という事だ。
「恵方(えほう)、声が大きすぎる!」
翔汰に言われて、悪い悪い、と言いながら走ってきて恵方は翔汰の隣に立った。
そして鈴琶に尋ねる。
「で?どんな感じだった?」
「それが、凄い鴇慈さんそっくりなんですよ」
鈴琶はちょっとおかしそうに言った。
「そっくり?まさか班長並にでかいとか?」
「結構迫力あるね、それ。鴇慈さんが2人いるみたいって」
「そうじゃなくて髪型とか、顔とか」
翔汰と恵方は想像してみるが、どうにも浮かばない。
それがわかったのか、鈴琶はもう少し詳しく説明する。
「えーと、鴇慈さんを小さくして、顔も少し幼くして、タバコとバンダナを取って水色の髪にした感じ…?」
既に鳶慈を見たことがあるモノになら、とてもわかりやすい説明なのかもしれないが…。
「……なんとなくわかったようなわからないような…だなぁ…」
頭を掻く翔汰に、恵方も同意する。
「そうだな。せめて鴇慈さんがいれば想像しやすいかもしれない…」
と、その時。
「呼んだか?」
「わあああ!!」
隣に突然鴇慈が立っていて、恵方は思わず叫んでしまった。
「はははは班長!!」
「いつの間にココに!?」
翔汰も鈴琶もビックリして固まっている。
「お前等…部隊をまとめてる身のくせに、こんな所で堂々とサボってるとは良い度胸だな」
鴇慈が、ニッコリと笑った。
別に鴇慈は怒ってるわけではない。
本人自体、今来た所なわけだし。
けれど、こういうとき笑われると、人間逆に怖いモノである。
「い、いや、コレはその…あのですね?」
恵方がしどろもどろになっている所に、翔汰が正直に応えた。
「実は、班長の弟さんの話を聞いてまして」
そう言うと途端、鴇慈の顔つきが変わった。
「鳶慈の?」
「私が鴇慈さんの弟さんらしい人を見かけたから、翔汰君たちに教えてたんです…。あの、思わず…。」
鈴琶もおずおずと言う。
すると、鴇慈はいきなり声を上げて笑った。
「何だ、そういう事か!」
懐からタバコを取り出して一服。
鴇慈は笑顔で言う。
「鈴琶が見たのは確かに俺の弟だろう。さっき会ってきた。後で皆に挨拶もあるだろうから、よろしく頼むな」
「はあ…」
鴇慈が妙に機嫌が良さそうなので、3人は顔を見合わせた。
「そういうわけだ。ほら、2人ともさっさと仕事に戻れ。鈴琶もな」
「は、はい!」
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