「そっかー。んじゃ、鳶慈君は鴇慈さんを追いかけてきたわけね」
ココは、懐古特捜部隊。
旨篤の襲撃の後覗いたら、部隊長の藍人(あいと 以下兄)が穏やかに笑って迎えてくれた。
その弟で副部隊長だという、藍人(らんと 以下弟)と、2人の補佐役をしている滸(ほとり)が紅茶とお菓子を準備してくれる。
滸は普通の人間だが、藍人兄弟は翼を持っている人間以外の種族らしい。
藍人(兄)は左翼しかなく目が開けない。
藍人(弟)は右翼しかなく声を出せない。
お互いは心の中で話せるのだが、兄の方が体が弱く2人揃っていても何かと大変。
ゆえにそのサポートをしているのが滸。
明るく元気ではきはきした性格。
2人と歳が同じなので気兼ねもない。
そんなわけで、自らその役をかってでたという。
興味深げに話し掛けてきたのは、その滸だ。
「ココに来るまで、1人で暮らしてたの?」
「いえ、1人といえば1人だったんですが、隣が琥香さんの家で、そこのおじさんたちにお世話になってました」
「じゃあ、琥香さんとも知り合いなんだ」
クッキーを齧りながら、滸はうんうんと頷いた。
紀阿も、紅茶に砂糖を溶かしながら話に混ざる。
「ビックリしましたよー。鳶慈君、宙爲さんとも前からの知り合いだったんです」
「え、宙爲さんとも?」
鳶慈は頭を掻きながら応える。
「まあ、皆兄さんがいたからこその知り合いなんですけど」
「じゃあ、迢さんとも?」
藍人(兄)が尋ねたので、鳶慈はコクリと頷いた。
藍人(弟)は、ワクワクした目で皆を見ている。
「『それじゃ、皆とすぐに仲良くなれるね』って、弟が」
藍人(兄)の代弁を聞いて、鳶慈がニッコリ笑った。
「多分」
――そう、なれると良いなぁ。
「もう、えっちゃん達には会ったの?」
「えっちゃん?」
鳶慈が首を傾げたので、滸が言い直す。
「えーっと、恵方達。あたし、17歳メンバーの事は皆そういう感じで呼んでるから」
皆同い年で、仲良いからね、と。
「はい、さっきお会いしました」
「えっちゃん、調子に乗ってまた窓から飛び込んだりしなかった?アレはやめろって言ってるのにやめないんだから…」
鳶慈たちは苦笑しながら顔を見合わせた。

 懐古の部屋から出て、鳶慈はのびをする。
「何だか…初めて普通に挨拶した感じだなぁ…」
それを聞いた紀阿が笑った。
「あそこはいつもあんな感じ。んー…団の中で唯一穏やかな所って感じかなぁ」
そこに返ってきた応えは。
「おや、という事はうちも穏やかじゃないって事かな?紀阿ちゃん」
聞いたことのない声に驚いて鳶慈が顔を上げると、さりげなーく琴佳の肩に手を置いてニコニコしている男が1人。
色素の薄い髪を軽く払いながら、柔らかく話し掛けてくる。
「君が噂の鳶慈君だね?ハロー、俺は漠(すなはら)。この琴佳ちゃんと同じ、資料収集部隊で働いてるお兄さんだよ」
琴佳は一体どうしたモノかと彼を見上げてはオロオロしている。
ココは、突然姿を現す団員のなんと多いことなのか。
鳶慈も、思いもかけない出会いにやや驚きながら慌てて頭を下げる。
「えと、はじめまして」
紀阿は紀阿で、ちょっと照れながら言った。
「えへへ、別に資料が穏やかじゃないなんてつもりは無かったんですけど…」
漠は3人を見回して微笑んだ後、腰を屈めて琴佳に目の高さを合わせる。
「琴佳ちゃん、琥香さんが呼んでるよ。皆で行こうか?」
それを聞いて、はたと気付いたように琴佳が声を出した。
「…あ…4番…ですね…?」
曖昧に頷いて、漠が琴佳を促した。
そして振り返って鳶慈と紀阿にも声を掛ける。
「君達もおいで。琥香さん、待ってるよ」



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