資料収集部隊の部屋に着くなり、琴佳が慌てて頭を下げた。
「ご、ごめんなさい琥香さん。私、4番の鍵…」
すると、奥の机で作業をしていた女性が立ち上がった。
「それは大丈夫だから安心して」
鳶慈はその姿を見て声を上げそうになる。
自分が知っている彼女は、綺麗な長い髪をしていたから。
そして、その右目は…。
そんな鳶慈の思いを知ってか知らずか、琥香は彼を見て嬉しそうに笑った。
「久し振りね、鳶慈」
「は、はい、お久しぶりです。その…髪の毛、切っちゃったんですね」
それを聞いて、琥香はちょっとビックリしたような顔をした。
「あ、そうか。鳶慈と最後に会った時は、まだ長かったのよね」
自分の髪に触りながら、ちょっと懐かしそうに言う。
「こっちの方が、軽くて良いのよ」
その後、まだオロオロしている琴佳に声を掛けた。
「ホントに大丈夫だから良いのよ、琴佳」
「で、でも…」
すると、気付いたように紀阿が声を出した。
「あ!私と会った時、用事の途中だったよね!?」
紀阿と琴佳は、鳶慈に会う直前にたまたまばったりと廊下で顔を合わせたのだ。
そしてちょっと話をしているうちに、鳶慈と迢の声が聞こえて隠れて…。
そのまま現在に至る、と。
実はその時、琴佳は琥香に頼まれて、4番資料室の鍵を取りに行った帰りだったのだ。
「私が鍵を持ってたからお仕事が…」
落ち込む琴佳に、琥香が苦笑しながら言った。
「なかなか帰って来ないから心配して迢の所に行ったの。そのついでに事情も聞いたし、合鍵も貰ったわ」
チャリ…と、その合鍵を見せる。
「鳶慈が来たからって事で、今日は特別。でも、今度からこういう時は鍵をココに持って来てから行くようにね」
「は、はい…。本当にごめんなさい」
「うわー、琴佳ちゃんゴメンー!琥香さんもごめんなさいー!」
琴佳も紀阿も、深々と頭を下げた。

「それで、もう一通り顔は見せたの?」
2人が落ち着いてから、琥香が言う。
「ええ、多分…。僕は全部で何箇所あるのかまだ知らないから微妙なんですけど…」
ということで、一緒にいた紀阿がうーん…と思い出しながら数える。
「……はい、大丈夫だと思います。鳶慈君、コレで完璧だね!」
――か、完璧って…。
全員覚えられたのかどうかはまだ不安だが。
「鴇慈にも、会ったんでしょ?」
「はい」
会ったどころか、一番最初に衝撃の再会だったような。
まあ、大した挨拶も無しに、結構あっさりと仕事に行ってしまったが。
「今日は色んな人に会って疲れたでしょうし、積もる話はまた今度にしましょう。父さん達の事もゆっくり聞きたいし」
『色んな人』という部分に、鳶慈は思わず大きく頷いてしまいそうだった。
「これから、宜しくね」
「はい」
鳶慈と琥香はそう言いながら微笑み合った。


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