ふと目を開くと、自分の家では無いけれど、もう見慣れた天井が視界を埋めていた。
団、寮、ベッド。
ポン、ポン、ポン、と、単語が頭に浮かぶ。
団の寮の、自分の部屋で眠っていたらしい。
「目、覚めた?」
視線をずらすと、琥香が微笑んでいた。
「……覚めた」
声が多少掠れているかもしれない。
起き上がると、これまた少しだけだがクラクラする。
「まだ、寝てて良いのよ」
「多分、平気」
「無理をすると、迢も、旨篤も怒るわ」
そこまで言って、ああ、と琥香は続ける。
「そうそう、今年からは、もしかすると宙爲もね」
「宙爲?あー…、そういえば、見られたんだっけか」
鴇慈は少々面倒臭そうに顔を顰めた。
それを見て、琥香は声を出して笑う。
「見られたどころか、第一発見者よ。それからココに運んだのも宙爲…と夜栄ね」
「お前と夜栄は、怒らないから助かるな」
頭を掻く鴇慈の顔を、ちょっと意地悪そうに見て琥香が言う。
「あら、本当に無理をするようなら、私だって怒るわよ?」
「……わかってるよ」
やれやれ、と鴇慈が再び布団に潜り込んで行くのを確認しながら、琥香が立ち上がった。
「じゃあ、私は一度戻るわね。多分、すぐに誰か来るわ」
「ん」
「なーんてやる気の無い返事なの、もう。そういえば、櫻己も来たのよ」
「…何とも無かっただろ?」
「ええ。でも一応ね。貴方が倒れる事を予想して、迢が先に連絡してたの」
布団の中から、溜め息が聞こえる。
「アイツ、忙しいんだから、せめて倒れてからにしてくれよ」
「それだけ心配してるのよ、皆」
「…」
鴇慈が何も言わなくなったので琥香が出て行こうと扉に触れた時、小さな声が耳に入ってきた。
それを聞いた琥香は苦笑しながら扉を開く。
「良いのよ。貴方は…頑張り過ぎなんだから」
廊下に出た後、先程の言葉を自分の中で繰り返す。
『悪いな、いつも』
――こんな時でもないと聞けない、珍しい台詞よね。
鴇慈の部屋の扉を背に、少しクスクスと笑っていると、怪訝そうな顔をしながら迢がやってきた。
「琥香?鴇慈は目を覚ましたのか?」
それに気付いて琥香は笑うのをやめ、迢の手を軽く叩く。
「ええ。だけどまだもう暫く眠ると思うの。近くで見ててあげて」
受付くらい、私がやっておくわよとも付け加え、さっさと行ってしまった。
「…俺の仕事は受付だけではないのだがな…」
まあ今、受付を交代してくれるというのはありがたいのだが。
「禾、琥香の様子と…、それから慧史の方も見てきてやってくれ」
「こっちは大丈夫だから、鴇慈さんのそばにいてあげると良い」
「…悪いな。なるべく早く戻るつもりだが」
天井裏から気配が消えたのを確認し、迢はそっと扉を開いた。

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