「そういえば、朝基さんと仁紫さん以外の人については何も聞いてないや」
鴇慈の食事が終わる頃、鳶慈はふと気付いた。
「綺誰と智弥と皆実だな」
食べ終わった食器をまとめながら鴇慈が応えた。
「アイツらは基本的にあまり害が無い。だから迢も特に言わなかったんだろ」
「害が無い?」
鳶慈は思わず眉をひそめる。
一緒に乗り込んできている敵なのに害が無いとは、何とも不思議な話である。
「砂、ごちそうさん。…ああ、特に綺誰とかはなぁ」
食器を砂に渡し、食堂を出ながら続けた。
「アイツはこっちの事を敵とかそういう風には思ってないんだよ。まあ、朝基も『敵』とは思ってないかもしれないが」
ポケットからバンダナを取り出し、いつものように頭につける。
「どちらかというと問題は仁紫だな。団、特に俺の事を目の敵にしてると思う」
「え?な、何で!?」
今までの話からすると、向こうが勝手に襲ってきているだけで、こちらからどうこうしているというのは無いように感じるが。
それなのに向こうから目の敵にされるとは何事か。
しかも、よりによって鴇慈の事を、とは。
「…まあ、色々あってな。あそこの連中は皆朝基が大好きで王様扱い。仁紫はその中でも第一の家来って事だよ」
鳶慈には、さっぱりわからなかった。
夜中に爆音で起こされて、よくわからない事が起こって、気になって眠れなくてすっかり寝不足。
そんな朝だったが、結局一日はあまり変わらず過ぎていった。
朝会の時には真剣だった団員たちも、一日何も無かった事ですっかり気が抜けたようだ。
夜会でその話も出なかった。
まだ迢の顔色は良くなかったが、今日早く寝れば大丈夫だろう。
――…迢さんの事だから、早く寝たりはしないんだろうけど…。
体が強くないくせに、無理をするタイプなのだ。
禾が何とか説得してくれれば良いが。
流石に今晩は来ないのだろうな、と鳶慈は窓の外を見て思った。
朝基は体を壊していて、恐らくまだ完全じゃないだろうという事だ。
王様扱いなのであれば、本人がどうあれ、周りが連夜の襲撃など許さないだろう。
――今更だけど……、僕、本当に戦闘集団に入ったんだなぁ…。
そんな事を考えながら電気を消し、鳶慈は布団に潜り込んだ。