一応入学試験もある。
どちらかというとそれよりも今までの成績重視。
だから、学年中に『今更騒いでも仕方無い』的なムードが漂っている気がしないでもない。
進学しない生徒も結構多いので、あまり殺伐としてはいない。
しかしながらやはりとりあえず受験生。
悪足掻き的に、買ってはおいたけれど開きもしなかった問題集などを見ている生徒もちらほら。
そんな10月のある日、琥香がやや疲れた顔で教室に入ってきた。
「どうした?」
迢が声を掛けると、彼女は肩をすくめて苦笑いを浮かべる。
「どうもこうも無いわよ。先生達って頭が固くて困るわ」
そして空いていた隣りの席に座った。
「…何を言ったんだ」
何となく嫌な予感がして、迢はそう尋ねる。
「あら、別に何を言ったってわけじゃないわ。『私は戦闘団に行きます』って言っただけよ」
迢は、椅子から滑り落ちるかと思った。
このあっさりとした、しかしとんでもない決断を、半年と少し前にも聞いた覚えがある。
何とか椅子の上に留まったまま、怒鳴らないように言った。
「……鴇慈を追う、と。そういう事か?」
「ええ」
ニッコリと返す幼馴染みは、とても楽しげだ。
「戦闘団なんて…お前どうするつもりだ」
「どうもしないわ。行くだけ行ってみるだけ。そんな生き方もありよ」
――どうして2人はこう…。
もう1人と同様彼女も止める事は出来ないとわかりつつ、とりあえず言っておいた。
「やめておけ。どう考えても危険だ」
けれど、思った通りの反応。
「駄ー目。もう決めちゃったんだもの」
ピッと人差し指を迢の額に当てて言う。
「迢は?どうするの?もう、決めたの?」
卒業まで五ヶ月を切ったのだ。
全然決まってませんなんて、許される事ではない。
「…多分、第二に…行くかな…」
口篭る迢に、琥香は笑顔で言う。
「まだ、大丈夫よ」
何が、と尋ねる前にチャイムが鳴り、琥香は自分の席へ戻ってしまった。

4月などよりも頻繁に呼び出される毎日。
未だ決められない自分。
あまりにもはっきりとしない態度に痺れを切らした校長が、12月には数校の受験を決定していた。
迢は、そんな勝手にとも思ったが、何も言えなかったし決める事も出来なかったので抵抗はしなかった。
両親は、自分の好きなようにしろと言う。
普段は嬉しい言葉のはずだけれど、道が見えない時には結構困る言葉だと思った。

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