時間が、過ぎていく。
医務室は、夜栄が運び込まれてから閉じられたままだ。
鴇慈も、旨篤も、何も言えず、時間ばかりが過ぎていく。
他の団員は、雰囲気的に2人に近付けなかったので、それぞれの部屋で待機している。
「アイツ…」
沈黙を破って、鴇慈が口を開いた時、医務室の扉が開いて櫻己の助手の男が出てきた。
その顔は、暗い。
「おい!夜栄は…!!」
旨篤が駆け寄って声を掛けるが、助手は首を横に振る。
「10分程前に、完全に生命活動停止。後は櫻己さんに聞いて下さい」
2人は呆然とする。
「まさか……」
医務室に走りこもうとする旨篤を助手は止めた。
「ちょっと待って下さい旨篤さん。櫻己さんが、もうしばらく待ってくれと」
気を和らげようとしてるのか、彼は軽く肩をすくめる。
「気になる事があるんだそうです。俺は…早く2人に知らせた方が、と思って…」
「そんなの関係ない!俺様は、今すぐ夜栄に会うんだ!あの馬鹿に言ってやりたいことがある!」
助手を押し退けて、旨篤は医務室の扉を開けた。
櫻己が静かに立っていた。
そのすぐ傍のベッドに夜栄が横たわっている。
櫻己よりも静かに。
微動だにせずに。
爆発に巻き込まれたとは思えぬほど綺麗で、ただ眠っているような。
「……夜栄…?」
旨篤が声を掛けるが、無論返事は無かった。
櫻己がゆっくりと旨篤を見た。
「待て、と言った筈だが…」
けれど、それ以上は何も言わなかった。
あの助手が外へ出ていって、この2人に何も伝えないはずが無い。
そして、それを聞いた2人――特に旨篤がただ黙って待っているはずが無いことがわかっていたから。
旨篤の後ろから、鴇慈も医務室に入ってきた。
少し離れた所で夜栄の顔を確認する。
「………駄目なのか…?」
鴇慈の問い掛けに、櫻己は目を伏せた。
「すまない。やれるだけの事はやったのだが…」
「そうか…」
「あまりにもな。…あの状態からでは、恐らく親父でも…。だが…」
そう言って下を向く。
救えなかった事を悔いているというより、何か考え込むように。
そんな櫻己を見て鴇慈は少し首を捻ったが、こう言うだけだった。
「お前のせいじゃ、ない」
そして壁に手をつき、俯いた。
旨篤はひたすら夜栄の名前を呼んでいる。
そんな2人を見て櫻己は、ドア付近でそっと覗いていた助手に、3人だけにしておいてやろうと言った。