「――で、一体どんな能力がついたんだ?」
感動の再会(??)に一段落ついた所で、旨篤が興味津々といった風に言う。
「俺様の前ですぐに見せてみろ。さあ、さあ!」
「旨篤…。さっきまであんなに泣いてたくせに元気だな」
鴇慈がそう言うと、旨篤は鴇慈の頬を横にびよーんと伸ばしながら赤くなって言った。
「トキ、今後その事を誰かの前で言おうものなら、ただじゃおかないぞ?」
「はいはい」
旨篤の手をそっと外しながら、鴇慈は微笑する。
「特にどうという自覚は、無いのだが」
夜栄は手を握ったり開いたりしながら首を傾げた。
「親戚とかに、何か能力を持った人はいなかったのか?」
そう鴇慈が訊くと夜栄はちょっと考えるような素振りを見せた後答えた。
「祖父が、体から手足を切り離して動かしていた。祖母は触れた所を全て土に変えていた」
「…えーと……」
鴇慈は頭を掻く。
何やら随分凄い事が出来るようになるらしい。
「ということは、人によって全然違うんだな」
「ああ。父や母の能力は見たことが無いが、歳の割に随分若い。恐らく何かあるのだろう」
「それは自分の意思で使うんだよなぁ?」
そうでなかったら、夜栄のおじいさんはともかく、おばあさんの能力はかなりはた迷惑かつ不便だ。
何も触る事ができない。
「多分そうだと思うが、一体どうやって使うのかはわからない」
夜栄はもう一度手を握る。
「まあ、慌てることも無いだろう。生活に支障が無ければ、今まで通りにしてれば良いんだしな」
鴇慈はそう言ったけれど、旨篤はちょっと不満顔。
「俺様、すぐに見たかったのだが」
「そう言っても仕方ないだろう」
よしよしと旨篤をなだめながら、鴇慈は夜栄を促す。
「おい、歩けるようならそろそろ皆の所に行こう。多分、皆お前が死んでると思ってる」
「ああ、そういえばそうだな」
「お前が一番に出て行って、皆を驚かせてやれ。俺様はそれを陰から見守ろう」
そう言って旨篤は、ウキウキと夜栄の背中を押してドアの前に連れて行く。
ドアの前に夜栄が立った瞬間、扉が開いた。
「夜栄さん!」
飛び込んできたのは恵方。
内開きのドアは、夜栄の体に当たる…ことなくすり抜けて、すぐ後ろにいた旨篤に激突した。
ゴンッ
「……っって………!!」
ちょうど額の第三の目辺りにドアが当たり、思わず旨篤はしゃがみこむ。
いきなり夜栄が目の前にいたので、恵方は驚いて後ずさる。
その様子をはたから見ていた鴇慈は怪訝そうな顔をした。
「夜栄…お前今…」
けれど、恵方の大きな声に全て掻き消された。
「夜栄さん!大丈夫だったんですか!?」
「ああ、大丈夫と言うか…」
「いや、良かったですよ!やっと櫻己さんが口割って俺ビックリして。夜栄さんが死んだとか何とか…!!」
「確かに死んだのは死んだのだが…」
「は?何言ってるんですか。んじゃ、俺もう平気だって皆に言ってきますから」
そして恵方はさっさと行ってしまった。
「旨篤、大丈夫か?」
鴇慈が声を掛けると、旨篤はようやく立ち上がった。
「アイツ…後で覚えていろ……」
思わず右手を握り締める。
左手で額を押さえたまま、旨篤は夜栄に言う。
「しかしどういうことだ?何故夜栄ではなく俺様にドアが当たったのだ?」
鴇慈も頷く。
「そうだ。お前、ドアすり抜けてたぞ」
夜栄は再び手を握ったり開いたりした後、そっと壁に触れた。
すると…。
「あ、壁に手が入って……。まさかお前…幽霊みたいになったとか…」
旨篤が驚いて夜栄に触れるが、ちゃんとそこにいる。
別に、体が映像のようになってしまったわけではないらしい。
「なるほど。それがお前の能力ってわけか」
鴇慈が納得したように言った。

事情を話すと、櫻己は、やはりな、と言った。
「怪我の具合その他、普通ではないと思っていたんだ。心停止の後、何故かみるみるうちに治っていく」
そして、ふぅ、と息をついた。
「しかし心臓は止まってしまったままだし…、確認する術が無くてな」
そういえば櫻己は、気になる事があると言っていた。
「こちらの勉強不足だ。すまない。まあ何にしろ良かった。あまり無茶はするなよ、夜栄」
「ああ」
旨篤の顔を見て櫻己は少し意地悪そうに言う。
「お前に何かあったときに泣いてくれる奴もいる事だしな」
「なっ……!!」
慌てて顔を隠す旨篤を見て、櫻己は思わず笑った。
「もし皆に気付かれたくないなら、顔を洗っておくんだな」
そう言われて旨篤は素直に洗面所へ向かった。
それを見て、残った3人は顔を見合わせて笑った。

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