倉庫に注意!


ガタガタ…ゴトッ
「はああぁ〜…」
揺れる木箱の鈍い音。
そして宙爲の溜め息。
「どうした?」
前を歩く鴇慈が振り返った。
「どうしたもこうしたも…何で俺がこんな所に…」
今二人がいるのは地下倉庫である。
普段は殆ど人が入る事が無い暗い所。
しかも、何が入っているのか知らないけれど、大量の箱があって実に狭い。
倉庫自体の広さは、雰囲気からしてかなり広そうではあるけれど…。
「第一、こんな所があったなんて俺知らなかったし」
辺りをキョロキョロしながら、実に嫌そうに言う宙爲。
鴇慈は平然としながら道を塞ぐ箱をどけていった。
「仕方ないだろ。手が空いてるの、お前くらいしかいなかったんだから」
それに、ココに入った事ある団員は限られてるぞ、とも言う。
「いや、いつも暇っぽい旨篤とかさぁ、お前が空いてるなら夜栄もとかさぁ。俺より力仕事に向いてるんじゃないか?」
旨篤も『いつも暇っぽい』などと、宙爲にだけは言われたくなかろうが。
今度は次々に色々な箱を開けながら鴇慈は答える。
「旨篤は買出し。夜栄は全然姿を見かけないな」
「姿を見かけない〜?まさかアイツ、俺がこういう暗い所嫌いだって知ってて、わざと隠れてるんじゃ無いだろうな」
「まさか。アイツがそんな器用な事するか。…お、あった。ほら、結構重いから気を付けろよ。そっち置いておいてくれ」
そして鴇慈は、宙爲に一つ、目的のモノが入った箱を手渡した。
確かに、大きさの割に重い。
「…思ったんだけど、迢が頼めば禾がすぐにでもコレを取りに来るんじゃないのか」
「良いじゃねぇか。俺らでできるんだし」
「ほら、アイツの方が俺より力強いしさ」
「企画は基本的にスケジュール目一杯なんだよ。短い時間でも禾が抜けてたら、迢がどうなるか」
「でも…こんな暗い所…」
宙爲がまだブツブツと文句を言いながら不安そうに辺りを見回すので、鴇慈はちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
スッと後ろに回り、体を引き寄せて耳元でボソッと呟く。
「…知ってるか?………出るんだぜ、ココ」
瞬間、宙爲の顔から血の気が引いたのが、見なくてもわかった。
体も硬直している感じで動かない。
やれやれ、やっと静かになった…というように、鴇慈はまた箱を探り始めた。

暗い所が苦手な人は、基本的に怖い話も苦手なものである。
そして、宙爲も例外ではない。
というか彼は、苦手というよりそういう系の話や物事が全く駄目なのだ。
「と…鴇慈てめぇっ!!」
暫し間をおいた後、怖さを振り払うかのように大声を出し、くるりと鴇慈の方を向く。
と。
自分の横の壁から一本、真っ白な腕が出てきていた。
「ぎゃあああああああっっ!!」
「どうした、宙爲!?」
まさか本当に出たのか?と、流石に驚いて振り返った鴇慈が見たのは、ぐったりしている宙爲と。
「お前、何でこんな所に…」
「…気を……失ったぞ……」
そう言いながら彼を支えている夜栄だった。
「もしかしてお前、壁から出てきたか?あーあー…、こりゃ刺激が強すぎたな…」
実は宙爲は、夜栄が人間ではない事をまだ知らない。
まあ、知っていたとしても、この状況で腕だけ出てきた所を見たら結果はこうなっていただろうが。
「煽った俺も悪かったな。仕方ねぇ…」
鴇慈は見つけ出した残りの箱を、先程宙爲に渡し、分けて置いてもらった箱に重ねた。
ひょい、と夜栄がそれを持ち上げる。
「…手伝おう…」
「おお、悪いな」


階段を上がっていくと、倉庫の前にちょうど迢と慧史、そしてその真上(ただし当然天井裏)に禾が来た所だった。
「ああ、鴇慈悪かったな。後は俺達で何とか…」
そこで、鴇慈が箱を持っておらず、別の何かを背負っている事に迢は気付いた。
「……何があったんだ…?」
呆れる迢に苦笑を返しながら、鴇慈はうんうん唸っている――恐らくうなされている――宙爲を背負い直す。
「まあ…色々とな…」



その後。
当然の如く宙爲は完全に倉庫に入れなくなり。
「あそこ出るんだって!本当なんだって!!」
「まーた、除決の隊長はそういう事を…。大袈裟だっつーの。なぁ、翔汰?」
「やめなよ恵方。多分宙爲さん倉庫で何かあったんだよ」
しばらくの間は、暗い所にも近付けなかったとか何とか。


ところで夜栄さんは何故あんな所にいたかというと。
「倉庫の掃除終わったー?」
「……壁は……」
団長命令で、ずっとお掃除していたのでした。

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