肩よりも少々伸びた髪を、後ろと顔の横で無造作にまとめたその男は、ポーズをつけながら話し掛けてきた。
「何かおかしいとは思ったが…。ココに入るのは感心しないな」
そう云って、パチンと指を鳴らすと、3人の体に巻き付いていたモノが外れた。
どうやら巻物だったらしい。
紙のような感触も当たり前だ。
「さて、何故こんな所に来たのか話してもらおうか」
巻物を拾いながら男が云ったが、気付いたようにまたポーズをつけた。
「ああ、私は乃木(のぎ)。気軽に『乃木ちゃん』と呼んでくれたまえ」
「…は、はあ…」
対応に困って思わず口の端がひくつく鳶慈だが、紀阿は平然と話し掛けた。
「ココだけ入った事が無かったから何があるのか気になって、ちょっと入ってみたんです」
すると乃木は眉をひそめた。
「何があるのかって…。入団の時、迢に聞かなかったのか?」
3人は首を横に振る。
乃木は激しく溜め息をついて、やれやれと云った。
「どうも彼には子供の好奇心というモノが理解できてないようだ。また今年も繰り返してしまったではないか」
「『も』って事は、去年も誰か捕まったんですか?」
「漉火だ」
その時の様子を思い出したらしく、乃木は遠い目する。
「あの時は大泣きされて本当に大変だった…。私は役目を果たそうとしただけなのだがな」
何となくその様が想像できた3人は、ちょっと乃木に同情した。
「それで、結局ココは一体?」
「宝物庫だ」
「宝物庫?」
また新しいポーズをつけながら乃木は得意気に云う。
「そう。こんな団に宝など無いと思っているだろうが、とりあえず重要なモノはあるからな」
――という事は、やっぱり宝は無いって事なのかな…。
鳶慈は心の中で密かにツッコむ。
「それを保管するのがココ。そしてそれを守っているのがこの私というわけだ」
「でも、私が団に来てから一度もお会いしてないのが不思議ですね」
紀阿は今年の新入団員の中で一番にココに来たのだが、乃木の姿を見掛けた事が無かった。
「ああそれは、君達が簡単に入れたという事でわかると思うが、鍵が壊れていてな」
「…え、ええ」
「直すまでの間、私がココへ住み込みのようにして守っているというわけだ」
「凄ーい!乃木ちゃん偉いですねー!」
「そうだろう、そうだろう」
紀阿が褒めたので乃木は上機嫌になっていたが、鳶慈の口の端はまたひくひくしていた。
――凄いけど…いつまで鍵を直さないつもりなんだろう…。
そんな重要な所の鍵がいつまでも壊れているなんて、何とものんきである。
「いかにも『宝物庫』という感じを出さない為にプレートをつけなかったが、こんな事が起きるのではやはりつけるか」
鳶慈の思いなど全く気付かない様子で、乃木は扉を見つめた。
「まあ、『宝物庫』と聞いて思わず入る事を恐れる迢の気持ちもわかるが…。何も云わないのもな」
ブツブツと呟いた後、ハッとして3人に云う。
「さて、わかっただろう。もうココに近付いてはいけないぞ」
「はーい」