「それでもボクは、アンタを狩らなきゃいけないんだ」
「わかってるよ、人間になりたいんだろ?」

幾人もの天使の血を飲んでココまで来た。
後一人、後一人の血でボクは。


片方の瞳が黒いのは、人間に近付いている証拠。
ようやく耳も丸くなってきた。

今更戻れない。
どうして最後に会ったのが、アンタみたいな奴だったんだろう。


「正面からは、やりにくいかな」
そして見えるアンタの背中の白い翼。
ボクの背中には、同じ形の黒い翼。
けれど、人間になってきた今は、もうだいぶ落ちている。
抜けていく羽根が嬉しいのか嫌なのか 自分で全然わからない。

「躊躇う事は無いよ、さあ」
その白い翼の向こうから、振り返る顔は笑ってた。
こんな時、こんな場所で、どうして笑えるんだアンタ なあ。




「酷いよなぁ。堕天使っていうだけで、天使はどうして皆嫌いなんだろう」
「アンタは違うのか?アンタはボクに何もしないのか」
「しないよ。悪い事も、それから良い事も、別に何にも」

『別に何にも』
そうだ、それで良かった。



放っておいてくれていれば、ボクだって こんな事は望まなかったのに。



「人間になれたらどうするんだ?」
「別に何にも」
「そうか、それなら良い」

『別に何にも』

言葉の端々から感じたアンタの気持ち。
本当はアンタも人間になりたかったんだろ。

人間になれたらアンタの分まで生きてやるなんて約束はしないけど
もしも生まれ変わるならアンタが人間に生まれるように頼んでおくよ

誰に? 誰かに








久し振りに月が出た夜 森の中。
出会ったボク達。
別れるボク達。

頭に残るアンタの笑顔。
地面に転がるアンタの骸。



人間になりたいと
そう思う前に出会えていたなら。


駄目だ それがいつだかもう思い出せない。





さよならとごめんなさいを数え切れないほど
心の中で何度も何度も何度も
他の誰にも思った事が無い だけどアンタにはどうしても



涙で歪んだボクの視界に入るのは、全て落ちた黒い翼。

back


[北斗七星団](c)Nagi Oborozuki 1999>>2005 All rights reserved.