『なーなー、怖い話しようぜ、怖い話ー』
『そんな話したって面白くも何ともねぇだろうが』
『……はははははは〜ん?
もしや陛下、お怖かったりするんじゃありませんことかしら?』
『敬語を使いたかったのかもしれないが、恐ろしい程間違っているぞ』
『伝わりゃ良ーの!』
『別に怖かねぇよ!
ただ、しろって言われても俺はそういう話を全然知らねぇぞ』
『あ、そっか。
そういえばそうだ。
皇帝の耳にそんな話がわんさと入ってくるわけ無いよな』
『……まあ、外へは勝手に出ていたし、知っていても不思議はないわけだがな』
『それは言わない約束だ』
『じゃあしょうがない。
この悪魔様がとっておきの話をしてあげよう』
『はいはい、どうぞ』
『謁見の間にある柱の竜をご存知かな諸君』
『俺と節制が知らねぇわけねぇだろ』
『よろしい。
実はアレって本物でさ、夜な夜な動いては城内にいる不埒な輩を取っては喰い取っては喰い……』
『……内容も話し方もお粗末だな』
『酷!!』
『何が怖ぇのか全くわからねぇ上に、どう考えても嘘だな』
『何でよ!!』
『考えてもみろよ。
不埒な輩を喰ってくれるなら大助かりだろ。
それに、もしその話が本当だとしたら』
『本当だとしたら?』
『真っ先に喰われてんのはお前だろ』
『もー!!
二人とも酷すぎるんだけどー!!』
『…そうだなぁ、あの竜に関してなら、俺はそれこそ世にも恐ろしい話を知っているぞ』
『何?
何?
そんなのがあるなら早く言ってよ!』
『立ち直り早ぇなぁ』
『だって節制なら色々知ってそうじゃんよ』
『じゃあ話してやろう。
あそこには竜が二匹いるな』
『いるいるー』
『そのうちの、玉座に向かって右側の竜の話だ。
上手く繋げてはあるが、実はよく見ると左の髭が折れた後がある』
『!!』
『そーなの?』
『それはその昔、とあるやんちゃな子供が俺の制止を振り切ってそこにぶら下がったせいなんだ。
一般的にはあまり知られていないが、あの竜は国宝でな…。
万が一誰かに知られてしまったらどうしようと、それはもう怖くて怖くて…』
『てめぇ!
絶対言うなって言っただろうが!!』
『……やんちゃな子供は、「殿下」って呼ばれてたんですね節制さーん』
『さあ、どうだろうな』
『ッ!
あーーーっ!!
こんな奴に見られるんじゃなかったー!!』
『馬鹿言え。
俺がいなかったら大怪我、打ち所が悪ければ昇天。
ついでに、つけてやったのは俺だろう』
『優しいじゃん、せっせーい』
『バレたらそれこそ俺の首が飛んだだろうからな。
もうお目付け役みたいなものだったのに、殿下を危険な目に合わせた上、国宝が壊れたなんて言えないだろう』
『だったら何で今更こんなトコでバラすんだ!!』
『そりゃあお前』
『今ここでバレたからって、一体誰が俺の首を飛ばすって言うんだ?』
『〜〜〜〜うううう!!』
『…節制さぁ、実は、ずっとずっと言いたくて仕方なかったんだろ』
『まあな。
秘密を分かち合える素晴らしい友人に出会えて本当に良かった』
『ああああ全く!!』
『あ〜あ〜、可哀想に。
因みにさ、俺が言ったのって全部嘘なわけじゃないんだよね』
『どういう事だ?』
『アレ、本当に本物なの。
でも喰うのは単なる不埒な輩じゃなくてね、城の中で皇帝達に危害を加える輩なんだよ。
だから、皇帝に何にもしない俺の事は、どーでも良いから見逃してくれてんの』
『…まさか』
『俺様がどれだけ長い事この辺一帯をうろついてると思ってんの。
第一、今ここでお前だけにそんな面倒臭い嘘つかねぇって。
この城を建てた時にいたすっごい魔術師がさ、あの柱に封じ込めたんだ。
で、何てーの?
守護神っていうか何かそんな感じのにしちゃったんだよね。
そのおかげでこの城さ、ビックリするほどいつまでもそのままなわけ。
魔力が詰まってんだろーね。
長い事出番が無かったからただの伝説になって、単なる国宝になっちまったみたいだけど。
だってこの城の中で皇帝の命狙う奴なんて滅多にいねぇだろうよ、そりゃあさあ』
『信じ難い話だが、本当ならば謝らせないといけないな』
『そーだねぇ。
とっても大事な守り神様のお髭を折っちゃったんだからねぇ』
『アイツは神なんて信じてないみたいだが』
『種類によるんじゃないの?
自分を守ってくれるなら歓迎でしょ』