『前から思ってたんだけどさー、何で皇帝の部屋って四つもベッドがあんの?』
『あ?
その日の気分で変えるからだろ』
『えー!?
何なのそれ無駄にリッチー!!』
『…普通そうじゃないのか?』
『ちょっと節制さん、貴方教育を間違えたんじゃありませんこと!?』
『…かもしれんな』
『な、何だよ!
子供の時からそうだったら、それが当たり前だって思うだろ!!』
『そもそも自分が、色んな意味で「当たり前」じゃないと知った方が良い』
『…こんなトコまで普通と違うなんて思わねぇじゃん…。
城下に行ったって、人ん家覗いてるわけじゃねぇんだし…』
『あら拗ねちゃった』
『まあ、教育係からも一般人のベッドの数まで教わらないだろうしな』
『一個なのか』
『基本的に一人一つあれば充分じゃないのか。
一人に複数なんて、金銭的にもスペース的にも厳しいだろう』
『ふーん、そんなもんか』
『でも良いなー。
こんなふかふかので寝られんの』
『お前のベッドは何か特殊なのか?』
『……』
『……』
『…何だよ。
そうか、また俺のは素材が特殊だからとかそういう話だな?』
『それもあるんだが…、知らなかったのか』
『みたいだねぇ。
そういえば言った事なかったかもー』
『だから、何だよ』
『あのね、俺様お家が無いの。
だから当然ベッドも無いの』
『!?
家が無い!?』
『あ、勘違いしないで。
好きでやってる事だから。
てきとーな時にてきとーなトコで、てきとーにやってんのが良いの』
『その「てきとー」に巻き込まれて、いつのまにか部屋の隅その他を占領されてる、俺を含めた数名の身になれという話だ。
朝起きたらドアの傍に倒れてるとか、初めての時は流石に驚いたぞ。
せめてソファーを使え』
『遠慮して床に寝てたんじゃない』
『そうだったのか。
俺の所にはそんな風に来た事がなかったから知らなかった』
『ココにこっそり忍び込むっていうのは、見つかった時に大変な形で捕まるからねー。
皇帝の場合は起きてる時じゃないとねー』
『俺も然るべき所へ訴え出たら、お前は捕まるわけだが。
お前が言う大変な形かどうかはともかく』
『えー!
超今更なんですけどー!』
『何て言うか、お前は許可を欲しがらないよな』
『だって、勝手にやっちゃうもん』
『でもココには来ないだろ?
節制みたいに俺公認にしちまえば出入り自由で、ココで寝ようと何だろうと誰も何も言わないじゃないか。
近衛達に、お前の事は通せって言っとけば良いだけなのに、お前はむしろそれを嫌がってるみたいだ』
『一応ねぇ、俺様だって弁えてんのよ。
まずいでしょうよ、皇帝のお友達に悪魔なんてさー。
だから、お城の皆さんには俺の事はこれからも秘密なの。
皇帝がいる時に、窓からこっそり、ね』
『そんなもんかねぇ』
back