場面:皇帝の部屋(寝室)
悪魔

『何かさ、皇帝って、帽子取ってる時に後ろから見ると、女の子みたーい』

皇帝

『ああ〜?
何処がだよ』

悪魔

『だってほら、普段見えないけど、密かに髪の毛長いじゃない。
そのせいだと思うんだけど』

皇帝

『馬鹿言え。
体格からしても、お前の方がよっぽど女みたいだろうが』

悪魔

『え?』

皇帝の言葉に、驚いた顔をして節制の方を見る悪魔。
それに対し、首を横に振る節制。
悪魔

『皇帝に言った事なかったんだっけ』

皇帝

『何をだ』

悪魔

『こんな言葉遣いしてるからよく勘違いされるんだけど、女なんだよね、俺様』

皇帝

『なっ!!!
何だって!!?』

悪魔

『ごめんね〜。
まさか言ってなかったとは思わなかったんだ〜、な〜んて』

皇帝

『お前〜〜〜!!』

怒りの形相でつかつかと悪魔に歩み寄る皇帝
悪魔

『い、嫌だなぁ、そんなに怒るなよ。
ほんの冗だ……』

皇帝

『だったら、人ん家フラフラ泊まり歩いてたりしたら駄目だろうが!!』

悪魔

『…え?』

皇帝

『確か、聞いた名前は男ばっかりだったな。
そんなの絶対駄目だ!
せめて女友達の家にしろ!
それが嫌なら、節制の家かココにしておけ、この馬鹿!!』

悪魔

『あれ〜?
ちょっと、皇帝さーん?』

二人の傍で笑いを堪えている節制
皇帝

『ちゃんと知ってたら俺だって、ふざけてでも殴ったりしなかったのに…』

悪魔

『いや、だからね?』

皇帝

『……でも。
結構長い付き合いなのに、気付かなくて悪かったな。
詫びにもならねぇけど、茶でも準備してくる』

さっさと部屋を出て行く皇帝。
廊下だと、いる事がバレてしまうので追えない悪魔は、節制に泣きつく
悪魔

『おーい、節制!
どうしてくれるのこれ!!』

節制

『自業自得だろう』

悪魔

『だってまさか、あんなの信じるなんて思わないじゃない!』

節制

『実は皇帝はな、口は悪いがビックリするほど素直なんだ。
よっぽどの事じゃない限り、割と何でも信じるぞ。
いや、思いのほか紳士的に育ってくれていて安心した』

悪魔

『安心とか言ってる場合かよ!
一国を治めてる人間が、こんな冗談あっさり信じちゃって良いもんなの!?』

節制

『皇帝という立場としては確かにまずいだろうな。
だから普段は、必死で…まあ、端的に言えば、人を疑おうと努力している。
その分、俺たちの前では基本的に、何も疑わないというわけだ』

悪魔

『信用してくれんのは嬉しいけどねぇ…。
だけど、まさかここまで。
竜の話は信じなかったくせによー』

節制

『あの時は、最初から空気が冗談じみていたからな。
お前はたまに、本当の話が冗談に聞こえて、冗談が本当の話に聞こえる喋り方をする。
皇帝は、その判断があまり得意でないのだろう。
……さて。
お前が如何にして皇帝に真実を明かすか、見ものだな。
信じている友人が騙していたと知ったら、酷いショックを受けるかもしれない』

悪魔

『俺様本気で困ってんのに、ホントいい性格してるよ。
お前も一応、片棒担いだろうがよ』

節制

『首を振っただけなんだがな。
まあ、良いだろう。
適当な所でフォローしてやるさ』

皇帝

『お待ちー』

ティーセットを持ちながら部屋に入ってくる皇帝
皇帝

『二人なのにカップ三つくれって言うのも変だから、茶を二種類にして、四つにして貰った。
これなら、味を混ぜたくないからって事で、大丈夫だよな。
ったく、いない事になってるって、面倒臭ぇなぁ』

適当にカップを配る皇帝
悪魔

『……あのさー』

おずおずと切り出す悪魔
皇帝

『何だよ』

悪魔

『ホントのホントの、ホントーーーの事言うとさー』

皇帝

『うん?』

悪魔

『俺様、超凄い勢いで普通に男なの』

皇帝

『………』

皇帝、黙って悪魔の方を見る
悪魔

『何つーか、まさかね、本当にね、信じちゃうとは思わなくて。
ちょっと軽い気持ちで、「女なんだ〜」とか言ってみただけでさー』

泳ぎまくる悪魔の目。
うつむく皇帝と、さらに焦る悪魔
悪魔

『ごめんな。
悪気は無かったんだ。
ホント、ちょっとふざけてみようかなって思って』

カタカタ…
皇帝の手が震え、ティーカップが音を立てる
悪魔

『え、ちょっと、やめてよ泣いてんの!?
そこまでショックだったとか俺様ビックリ…』

皇帝

『アハハハハハ……!!』

悪魔

『……あ?』

悪魔が振り返ると、節制は目をそらして肩を震わせている
皇帝

『お前!
俺が!
本気であんな事!
信じたと思ってたのかよ!!』

笑い続ける皇帝
悪魔

『ちょっ……!!
え、節制も!?
もしかして節制も俺の事騙してた!?
皇帝が、ホントは信じてないって知ってたの!?』

節制

『まあ、たまには騙されるのがお前の側というのも良いだろうと思ってな』

悪魔

『ひっでーー!!
あんな真面目な顔で、もっともらしい事語ったくせに!!』

節制

『何を言う。
俺は殆ど嘘はついていないぞ。
実際、皇帝は素直すぎで騙されやすい』

皇帝

『悪かったな』

節制

『良い事でもあるから、良い方向に伸ばさないとな。
…そして今、人を疑おうと努力しているのも本当。
基本的に俺たちの事を疑わないのも本当だが、だいぶ冗談と真実がわかってきたというのが現状だな。
つまり、判断が得意になってきた、と』

皇帝

『アレだけいつも、色々冗談ばっかり言ってたら、俺だってわかる』

節制

『まずは身近な者の冗談と真実の区別から、という事だ。
「普段」を知らなければ、相手の状態が今、「本気」なのか「冗談」なのか、わかり辛い。
だから、皇帝がお前の事をだいぶわかってきた、と考えれば、多少なりとも救われるんじゃないか』

悪魔

『へーへー。
ありがたい事でござーますねー』

皇帝

『腐んなよ。
今度はさ、二人で節制の事騙してやろうぜ』

悪魔

『お?
何それ、本気?』

皇帝

『当たり前だろ。
いつも何でもわかってる顔されてんの、むかつくだろうが』

悪魔

『そーだよなー。
うん、そーしよう』

皇帝

『覚悟しとけよ、節制』

悪魔

『しとけよー』

節制

『楽しみにしているさ』

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