『何かさ、皇帝って、帽子取ってる時に後ろから見ると、女の子みたーい』
『ああ〜?
何処がだよ』
『だってほら、普段見えないけど、密かに髪の毛長いじゃない。
そのせいだと思うんだけど』
『馬鹿言え。
体格からしても、お前の方がよっぽど女みたいだろうが』
『え?』
『皇帝に言った事なかったんだっけ』
『何をだ』
『こんな言葉遣いしてるからよく勘違いされるんだけど、女なんだよね、俺様』
『なっ!!!
何だって!!?』
『ごめんね〜。
まさか言ってなかったとは思わなかったんだ〜、な〜んて』
『お前〜〜〜!!』
『い、嫌だなぁ、そんなに怒るなよ。
ほんの冗だ……』
『だったら、人ん家フラフラ泊まり歩いてたりしたら駄目だろうが!!』
『…え?』
『確か、聞いた名前は男ばっかりだったな。
そんなの絶対駄目だ!
せめて女友達の家にしろ!
それが嫌なら、節制の家かココにしておけ、この馬鹿!!』
『あれ〜?
ちょっと、皇帝さーん?』
『ちゃんと知ってたら俺だって、ふざけてでも殴ったりしなかったのに…』
『いや、だからね?』
『……でも。
結構長い付き合いなのに、気付かなくて悪かったな。
詫びにもならねぇけど、茶でも準備してくる』
『おーい、節制!
どうしてくれるのこれ!!』
『自業自得だろう』
『だってまさか、あんなの信じるなんて思わないじゃない!』
『実は皇帝はな、口は悪いがビックリするほど素直なんだ。
よっぽどの事じゃない限り、割と何でも信じるぞ。
いや、思いのほか紳士的に育ってくれていて安心した』
『安心とか言ってる場合かよ!
一国を治めてる人間が、こんな冗談あっさり信じちゃって良いもんなの!?』
『皇帝という立場としては確かにまずいだろうな。
だから普段は、必死で…まあ、端的に言えば、人を疑おうと努力している。
その分、俺たちの前では基本的に、何も疑わないというわけだ』
『信用してくれんのは嬉しいけどねぇ…。
だけど、まさかここまで。
竜の話は信じなかったくせによー』
『あの時は、最初から空気が冗談じみていたからな。
お前はたまに、本当の話が冗談に聞こえて、冗談が本当の話に聞こえる喋り方をする。
皇帝は、その判断があまり得意でないのだろう。
……さて。
お前が如何にして皇帝に真実を明かすか、見ものだな。
信じている友人が騙していたと知ったら、酷いショックを受けるかもしれない』
『俺様本気で困ってんのに、ホントいい性格してるよ。
お前も一応、片棒担いだろうがよ』
『首を振っただけなんだがな。
まあ、良いだろう。
適当な所でフォローしてやるさ』
『お待ちー』
『二人なのにカップ三つくれって言うのも変だから、茶を二種類にして、四つにして貰った。
これなら、味を混ぜたくないからって事で、大丈夫だよな。
ったく、いない事になってるって、面倒臭ぇなぁ』
『……あのさー』
『何だよ』
『ホントのホントの、ホントーーーの事言うとさー』
『うん?』
『俺様、超凄い勢いで普通に男なの』
『………』
『何つーか、まさかね、本当にね、信じちゃうとは思わなくて。
ちょっと軽い気持ちで、「女なんだ〜」とか言ってみただけでさー』
『ごめんな。
悪気は無かったんだ。
ホント、ちょっとふざけてみようかなって思って』
『え、ちょっと、やめてよ泣いてんの!?
そこまでショックだったとか俺様ビックリ…』
『アハハハハハ……!!』
『……あ?』
『お前!
俺が!
本気であんな事!
信じたと思ってたのかよ!!』
『ちょっ……!!
え、節制も!?
もしかして節制も俺の事騙してた!?
皇帝が、ホントは信じてないって知ってたの!?』
『まあ、たまには騙されるのがお前の側というのも良いだろうと思ってな』
『ひっでーー!!
あんな真面目な顔で、もっともらしい事語ったくせに!!』
『何を言う。
俺は殆ど嘘はついていないぞ。
実際、皇帝は素直すぎで騙されやすい』
『悪かったな』
『良い事でもあるから、良い方向に伸ばさないとな。
…そして今、人を疑おうと努力しているのも本当。
基本的に俺たちの事を疑わないのも本当だが、だいぶ冗談と真実がわかってきたというのが現状だな。
つまり、判断が得意になってきた、と』
『アレだけいつも、色々冗談ばっかり言ってたら、俺だってわかる』
『まずは身近な者の冗談と真実の区別から、という事だ。
「普段」を知らなければ、相手の状態が今、「本気」なのか「冗談」なのか、わかり辛い。
だから、皇帝がお前の事をだいぶわかってきた、と考えれば、多少なりとも救われるんじゃないか』
『へーへー。
ありがたい事でござーますねー』
『腐んなよ。
今度はさ、二人で節制の事騙してやろうぜ』
『お?
何それ、本気?』
『当たり前だろ。
いつも何でもわかってる顔されてんの、むかつくだろうが』
『そーだよなー。
うん、そーしよう』
『覚悟しとけよ、節制』
『しとけよー』
『楽しみにしているさ』
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