場面:謁見の間
皇帝

『いきなり呼び出してすまなかったな』

魔術師

『いえ、陛下のご命令ですからね。
で、一体何の御用なんですか』

口調とは裏腹に、少々硬い顔つきの魔術師
皇帝

『そう緊張しないでくれ。
少しお前に訊きたい事があるんだ。
答えてくれるか?』

魔術師

『僕が答えられる範囲の事であれば』

皇帝

『勿論それで構わない。
まず訊きたいのは名前についてだ。
魔術師の名を持つ者はこの世界に一人だな?』

魔術師

『僕だけのはずです』

皇帝

『そうか。
では、その名を持たぬ者は魔術が使えないというのは本当か?』

魔術師

『えーと、そう、ですね。
はい』

皇帝

『お前が魔術師になったのはいつだ?』

魔術師

『陛下が即位された少し後だったと思います』

皇帝

『なるほど。
ところで、魔術は何が出来る?』

魔術師

『魔術師の技量によりますが、人が思いつくような事は大抵出来ます』

皇帝

『……目に映らぬほど遠くの者に、危害を加えるような事も?』

魔術師

『勿論です。
……え、僕もしかして何か』

皇帝

『大丈夫だ。
別にお前を何か疑っているわけではない。
俺がお前に、それを命じるわけでもない。
だが、万が一そういう事をしたいと思った場合は、お前に頼むしかないという事か』

魔術師

『それでも良いですけど、陛下ご自身が手を下す事もできますよ』

皇帝

『魔術が使えないのにか?』

魔術師

『「儀式」というものがあります。
必要な物を揃えて手順通りに事を行えば、誰でも魔術と同じ効果を得られます。
僕らが呪文で火をつけるのと、他の人がマッチなんかで火をつけるみたいなものですね。
当然、難しい魔術であるほど、色んな物が必要になるし、手順がややこしい儀式になりますけど』

皇帝

『では、どんな手間も厭わなければ、誰でも魔術と同じ効果を得られるという事か…』

魔術師

『そうなんですけど』

皇帝

『けど?』

魔術師

『魔術も儀式も作るものです。
そして、作った魔術の原理を知っているのは生み出した人間だけ。
つまり、魔術の制作者が儀式を作っていなかったら、その儀式は存在しないです』

皇帝

『そうか。
では、現在ある魔術の中でも、儀式があるものは限られているという事なんだな』

魔術師

『そうです。
まあ、もう一度組み立て直せ作れるのかもしれませんが、基本的には呪文で覚えちゃいますからね。
そこまでして作らないといけない儀式っていうのも、なかなか無いですし』

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