場面:月の店
SE:ガヤガヤ……(店の客達)
一番前に並んでいた男に紙を渡しながらくるりと椅子を回した後、客側に背を向けたまま話す月。

『はい、次、どーぞ』

皇帝

『特に紹介というわけではないんだが、腕の良い情報屋という話を聞いて来た。
一見の客は無理か?』

『いや、こだわんないねぇ。
情報が欲しいってヤツにゃ、よっぽどの事がない限り平等に提供してるつもりだがね』

皇帝

『そうか、それなら安心だ。
本当なら俺自身で調べたい事なんだが、なかなかそうもいかなくてな』

『わけありの客なんざ、ここいらには山ほどいるさ。
むしろ重い事情を持ってねぇ方が珍しいだろうよ。
その辺の事情ってやつぁ訊かねぇが、後々の為にちょっとした事はこっちに保管させてもらうが構わんかね?』

言いながら振り返り、皇帝の顔を見て固まる月。
皇帝はそれに気付かず、普通に話を続ける。
皇帝

『何を言えば良い?
名前か?
それとも住まいか?』

『あ、アンタ…!!』

皇帝

『何だ?』

『ちょいと待ちな!』

慌てた様子で伝声管を探り、そこに何やら囁く月。
その後、店の中に向かって大きな声で言う。

『大口だ、悪ぃ!
しばらく閉めるぜ!!』

渋々と下がる他の客達。
彼等と皇帝の間を隔てるように壁が下りてきた。
SE:ゴゴゴゴ……
皇帝

『大口?
俺は別に…』

人差し指を口に当てる月。
皇帝を引っ張って別の部屋へ連れて行き、慎重に扉を閉める。

『ふぅー……危ねぇ…』

皇帝

『一体どういう事だ?』

思いっきり呆れた顔をする月。

『どうもこうも…。
アンタ、皇帝だろ?
一体何だってこんな所に直接来てんだ?』

皇帝

『何でわかったんだ?
街の人間は俺の顔なんて覚えてないから、適当な服着りゃわからないって知り合いが言ってたんだが』

『そりゃ、豆粒より小さく見えるような戴冠式その他じゃ、顔までしっかり覚えてるヤツなんていねぇだろうよ。
でもな、アンタにゃそれがあんだろう?』

皇帝の右頬を指す月。
皇帝

『そうか、お前は「鍵」の事を知っているんだな?』

『こんな仕事してんだ。
それくらいの事は知ってる。
ビックリしたぜぇ?』

皇帝

『皇帝相手に情報は売れないか?』

『んな事ぁねぇけど。
でもま、万が一の事を考えて、アンタは常に別室扱い。
客足が止むまで待ちで時間が掛かるが、それでも良いかい?』

皇帝

『構わん。
しかし、これからどれだけ通う事になるかわからないが、毎回壁が出てくるのも気が引けるな』

『外からこの部屋に入る道を教えてやんよ。
来た時には情報を渡すふりするから、紙受け取って帰ったように見せながらココで待ってな』

皇帝

『なるほど、わかった』

『はー…やれやれ。
噂ってのぁ恐ろしいもんだな。
まさかこんなトコが皇帝の耳にまで入るたぁさぁ…』

皇帝

『まあ、俺にも色んな知り合いがいるって事だ』

back
[北斗七星団]--[Flourish](c)Nagi Oborozuki 2004>>2007 All rights reserved.