女教皇

『お目通りが叶って光栄です、陛下。
先日は兄が大変な失礼を致しました。
この場を借りてお詫びさせて頂きたく思います』

皇帝

『ほう、妹の方が余程礼儀がなってるわけか』

女教皇

『滅相もございません。
兄妹共に軽輩でございます。
理由はわかりませんが、何故か兄は陛下を目の敵にしている様子。
本来ならば本人がこの場に参らねばならないというのに…何ともお恥ずかしい限りです。
けれど陛下、兄も多くの信者達をまとめる身。
跡継ぎもまだおりませぬ今、万が一の事があればその全てが道を失います。
何卒寛容なご処置を賜りたいと、私が参りました』

皇帝

『アイツの無礼加減は今に始まったこっちゃねぇ。
それに、俺もあの時は頭に血が上って色々口走った。
この件に関してはお互い忘れる事にしようぜ』

女教皇

『ああ、ありがとうございます!
その広き御心に感謝致します』

皇帝

『……そうだ、お前にも訊いてみるか』

女教皇

『私に答えられるような事でしたら何なりと』

皇帝

『お前は、本当に神がいると信じているのか?』

女教皇

『勿論でございます。
陛下は、信じていらっしゃらないのですか?』

皇帝

『まあ、色々あってな。
やっぱり怒るか?』

女教皇

『いいえ、個人の自由ですから。
はっきりと誰の目にも映るような何かでない限り、万人に信じろというのは無理だと考えております』

皇帝

『柔軟だな。
では、何故お前は信じる?』

女教皇

『常に見られていると思えば、気が引き締まります。
そして自分を磨いていけます』

皇帝

『なるほど。
では、救うものと救わないものがいる事についてはどう考える?』

女教皇

『人間と神は決して繋がってはいないのですわ。
神は私達を見ているだけなのです。
…そうですね、いわば、作った紙飛行機を次々に飛ばして、その行く先を眺めているだけというか。
それが何処かに引っ掛かろうと、綺麗に着地しようと、はたまた何かにぶつかって壊れてしまおうと手は出さない。
そういう存在なのです。
この世界そのものとも言えるかもしれません』

皇帝

『……お前、兄貴とよく意見がぶつかるだろう』

女教皇

『お分かりになりますか』

皇帝

『考えがまるで違う。
良いのかよ、そんなんで』

女教皇

『それぞれの信者の傾向も違いますから大丈夫です。
信じたいものを信じればそれで良いのですよ』

皇帝

『面白ぇ。
兄貴とはどうにも合いそうにねぇが、お前の事は好きになれそうだ』

女教皇

『まあ!
光栄の至りにございます陛下』

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