『やっと見つけた!』
『え?』
『今のは…貴方?
まさかそんな』
『そのまさかさ。
よいしょっと』
『一般人じゃ、森人の事は知らないか。
人間には、吊るされ人って呼ばれてる』
『吊るされ人…?
森で時々、人が逆さまにぶら下がってるっていうあの噂?
本当だったの?』
『うっかりこの大きさで木にぶら下がって寝てる所を目撃されたんだろうなぁ。
いつもは縮んでるから見つかりゃしないんだけど』
『えーと……その吊るされ人さんが、私に何か御用ですか?』
『そうそう、最重要事項だぜ。
君、この前森に入って来たろ?
そん時こっそり見かけてさ』
『ええ』
『あまりの可愛さに一目惚れ!
って事で、俺の妃にならないか?』
『……え?』
『ココだけの話、俺は森の王子なんだ。
だから俺と結婚すれば、もれなくお妃様ってわけよ。
そりゃあもう森中から特別扱いだぜ?』
『い、いえ、私は……』
『まあ、俺は二度目だけど、君からすれば初対面だから戸惑うのもわかるけど。
でもこういう出会いも有りって事で』
『なーにが有りって事でだこの変質者』
『月!
どうしてココに!』
『そりゃあこっちの台詞さね。
連絡取れねぇから覗いてみりゃあ、変な奴にからまれてっから直接来たんよ。
森には来んなって言ったろうがよ。
まさかこんなのがいるって思ってたわけじゃねぇが』
『いててて……何だぁてめえ!?』
『情報屋だよ。
途中からだが話は聞いてた。
アンタ阿呆か。
住処の森にさっさと帰れ』
『何だとこの野郎!!』
『やめて下さい!』
『どいてろ!
怪我するぞ!!』
『月が蹴った事はごめんなさい。
でも、私が怖い目に遭ってると思ってしてくれたんです。
だから、月を殴ったりしないで下さい。
お願いします』
『うううう〜〜……』
『…命拾いしたな』
『命拾いって…あの程度で殺人かね?
随分な森の王子様だな』
『月、挑発しちゃ駄目よ』
『わかってんよ』
『ありがとうございます、吊るされ人さん』
『君からあんな風に頼まれたらやめるしかないだろ』
『ただ私…お妃とかそういうお話はちょっと…』
『まあ、仕方が無いよ』
『では…』
『また会いに来るから、じっくり考えておいてくれよな』
『え』
『君が会いに来てくれるんでも良いけど。
あ、そこの月とかいう奴はもう一生俺の前に姿を見せるな。
じゃあな!』
『……えーと……』
『…誰が好き好んでアンタなんかに姿見せっかよ…。
ほら、帰っぞ』
『え、ええ。
…今のって…解決したのかしら?』
『あんな奴の事ぁ忘れちまいな。
で、もう森には近付くなよ』
『…そうね…。
そういえば、お店』
『閉めてるよ。
だからさっさと帰んだろーが』
『………。
……月』
『あん?』
『ごめんなさい。
ありがとう』
『……お前さんは謝ってばっかだな』