場面:森の入り口
吊るされ人

『やっと見つけた!』

正義

『え?』

正義の目の前にヒラヒラと大きな蝶が現れる。
正義

『今のは…貴方?
まさかそんな』

吊るされ人

『そのまさかさ。
よいしょっと』

蝶が、普通の少年くらいの大きさに。
吊るされ人

『一般人じゃ、森人の事は知らないか。
人間には、吊るされ人って呼ばれてる』

正義

『吊るされ人…?
森で時々、人が逆さまにぶら下がってるっていうあの噂?
本当だったの?』

吊るされ人

『うっかりこの大きさで木にぶら下がって寝てる所を目撃されたんだろうなぁ。
いつもは縮んでるから見つかりゃしないんだけど』

正義

『えーと……その吊るされ人さんが、私に何か御用ですか?』

吊るされ人

『そうそう、最重要事項だぜ。
君、この前森に入って来たろ?
そん時こっそり見かけてさ』

正義

『ええ』

吊るされ人

『あまりの可愛さに一目惚れ!
って事で、俺の妃にならないか?』

正義

『……え?』

吊るされ人

『ココだけの話、俺は森の王子なんだ。
だから俺と結婚すれば、もれなくお妃様ってわけよ。
そりゃあもう森中から特別扱いだぜ?』

正義

『い、いえ、私は……』

吊るされ人

『まあ、俺は二度目だけど、君からすれば初対面だから戸惑うのもわかるけど。
でもこういう出会いも有りって事で』

『なーにが有りって事でだこの変質者』

吊るされ人を横から蹴り飛ばす月。
正義

『月!
どうしてココに!』

『そりゃあこっちの台詞さね。
連絡取れねぇから覗いてみりゃあ、変な奴にからまれてっから直接来たんよ。
森には来んなって言ったろうがよ。
まさかこんなのがいるって思ってたわけじゃねぇが』

吊るされ人

『いててて……何だぁてめえ!?』

『情報屋だよ。
途中からだが話は聞いてた。
アンタ阿呆か。
住処の森にさっさと帰れ』

吊るされ人

『何だとこの野郎!!』

月に殴りかかる吊るされ人を止める正義。
正義

『やめて下さい!』

吊るされ人

『どいてろ!
怪我するぞ!!』

正義

『月が蹴った事はごめんなさい。
でも、私が怖い目に遭ってると思ってしてくれたんです。
だから、月を殴ったりしないで下さい。
お願いします』

吊るされ人

『うううう〜〜……』

拳を下げる吊るされ人。
吊るされ人

『…命拾いしたな』

『命拾いって…あの程度で殺人かね?
随分な森の王子様だな』

正義

『月、挑発しちゃ駄目よ』

『わかってんよ』

正義

『ありがとうございます、吊るされ人さん』

吊るされ人

『君からあんな風に頼まれたらやめるしかないだろ』

正義

『ただ私…お妃とかそういうお話はちょっと…』

吊るされ人

『まあ、仕方が無いよ』

正義

『では…』

吊るされ人

『また会いに来るから、じっくり考えておいてくれよな』

正義

『え』

吊るされ人

『君が会いに来てくれるんでも良いけど。
あ、そこの月とかいう奴はもう一生俺の前に姿を見せるな。
じゃあな!』

小さくなって森の中へ帰る吊るされ人
正義

『……えーと……』

『…誰が好き好んでアンタなんかに姿見せっかよ…。
ほら、帰っぞ』

正義

『え、ええ。
…今のって…解決したのかしら?』

『あんな奴の事ぁ忘れちまいな。
で、もう森には近付くなよ』

正義

『…そうね…。
そういえば、お店』

『閉めてるよ。
だからさっさと帰んだろーが』

正義

『………。
……月』

『あん?』

正義

『ごめんなさい。
ありがとう』

『……お前さんは謝ってばっかだな』

言いながら微笑む月
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