『おかしいんじゃないか』
『何だい。
久しぶりに現れたと思ったらいきなり』
『陛下に呼ばれたんだ』
『アンタ、一体何したんだい?』
『何もしていないよ。
ただ単に、魔術師について色々訊かれたんだ』
『へえ…?』
『その時、改めて口にして、気付いたんだ』
『何をだい?』
『何故、君は姿を消す魔術を使える?
アレは儀式ではないだろう』
『!』
『生きているうちに名を捨てたからかい?
そもそも、何故生きているのに、魔術師の名を捨てる事ができたんだい?』
『……わからない』
『隠者!』
『本当にわからないんだよ、魔術師。
アタシは魔術師の名を捨てたいと思っていた。
そう、強く願っていたら、本当にそうなったんだ』
『そんな馬鹿な……!』
『アタシだって驚いたよ。
確かに名は変わる物。
だけど魔術師の名が変わるのは、命を落とした時だけのはず。
それなのに、アタシは生きてた。
気付いたら隠者だった。
けれど、魔術は使えるままだった』
『じゃあ君は、「隠者」になりたくてなったわけじゃないという事かい?
ただ、魔術師の名を捨てたかっただけだと』
『そういう事になるね』
『…どういう事なんだ…』
『……この世界の理が、崩れてきているのかもしれないよ。
アタシ達なんかには、全然手の届かない場所でね。
…さあ、これでわかったろ?
アタシも、何故隠者になったのかなんて知らないのさ。
もう追いかけ回すのはやめておくれよ』
『そんな簡単に…困るよ!』
back