魔術師

『おかしいんじゃないか』

隠者

『何だい。
久しぶりに現れたと思ったらいきなり』

魔術師

『陛下に呼ばれたんだ』

隠者

『アンタ、一体何したんだい?』

魔術師

『何もしていないよ。
ただ単に、魔術師について色々訊かれたんだ』

隠者

『へえ…?』

魔術師

『その時、改めて口にして、気付いたんだ』

隠者

『何をだい?』

魔術師

『何故、君は姿を消す魔術を使える?
アレは儀式ではないだろう』

隠者

『!』

魔術師

『生きているうちに名を捨てたからかい?
そもそも、何故生きているのに、魔術師の名を捨てる事ができたんだい?』

隠者

『……わからない』

魔術師

『隠者!』

隠者

『本当にわからないんだよ、魔術師。
アタシは魔術師の名を捨てたいと思っていた。
そう、強く願っていたら、本当にそうなったんだ』

魔術師

『そんな馬鹿な……!』

隠者

『アタシだって驚いたよ。
確かに名は変わる物。
だけど魔術師の名が変わるのは、命を落とした時だけのはず。
それなのに、アタシは生きてた。
気付いたら隠者だった。
けれど、魔術は使えるままだった』

魔術師

『じゃあ君は、「隠者」になりたくてなったわけじゃないという事かい?
ただ、魔術師の名を捨てたかっただけだと』

隠者

『そういう事になるね』

魔術師

『…どういう事なんだ…』

隠者

『……この世界の理が、崩れてきているのかもしれないよ。
アタシ達なんかには、全然手の届かない場所でね。
…さあ、これでわかったろ?
アタシも、何故隠者になったのかなんて知らないのさ。
もう追いかけ回すのはやめておくれよ』

魔術師

『そんな簡単に…困るよ!』

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