「ふぁ〜あ…」
下界との境の門がよく見える、いつもの木の上で欠伸を一つ。
今日も天界は平和です。
それは良い事なのですが、戦う事を仕事にしている彼――タウラスはちょっと退屈そう。
「あー、暇だ…」
そう思いながらふと木の根元を見ると、赤く長い髪を後ろで一つの三つ編みにした、
あまり目つきの良くない青年がこちらを見上げていました。
「…スコーピオか。何の用だよ」
タウラスはちょっと不機嫌そうに言います。
実は、タウラスとスコーピオはあまり仲が良くないのです。
スコーピオの方も、仕方なく来てやったという感じがありありと。
「…馬鹿が。こんな所で呆けてやがって…」
「な、何だと!?」
いきり立つタウラスですが、スコーピオはそんなことお構いなし。
左手で前髪をかきあげると、さっきのタウラスより不機嫌そうに言いました。
「例の奴が生まれた。すぐに来い」
そう言われて一転。
タウラスの顔がパッと明るくなります。
「何!?生まれたのか!?」
タウラスは苛つく心も忘れて、急いで木から飛び降りました。
+++++
「カプリコーン」
ふわふわの羊みたいな格好をした男の子が、図書館の扉を開けて呼びました。
すると、たくさんの本棚の奥からぱたぱた走ってくる女の子。
小柄で、肩の辺りで切り揃えた髪。
いかにも真面目そうな雰囲気です。
「はい、何か御用ですか?アリエス様」
読みかけた本を持ったまま肩で息をする彼女の様子が可笑しくて、思わずアリエスは笑ってしまいます。
―まったく、この子は本当に良い子だね、と。
「…アリエス様?」
不思議そうに首を傾げるカプリコーン。
「ああ、ゴメンゴメン」
アリエスは、こほんと一つ咳払い。
「ほら、おいで。あの子が生まれたらしいよ」
「え?ホントですか!?」
カプリコーンは顔を輝かせると、本を机に置いてアリエスの方に向き直りました。
「こんな事で嘘をつかないさ」
その言葉に、カプリコーンは大慌て。
「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃ…」
「…冗談だよ」
本気ですまなそうな顔をするカプリコーンに微笑みかけると、アリエスは外に向かって声をかけます。
「君も。そこで僕を狙ってないで、おいで。サジタリウス」
すると、図書館のすぐ傍にある木の陰から、狩人風の少年が気まずそうに出てきました。
「ちぇ。バレてたのか」
+++++
「ラーイーブーラー!!」
全身をピンクの服に包んだ女の子が走ってきて、そのままライブラに抱きついてきました。
不思議な形の髪飾りが、ライブラの頭を叩きます。
「う、うわっ!キャンサーちゃん、どうしたの?」
ずり落ちた眼鏡と体勢を直しながら、ライブラは椅子から立ち上がります。
「ライブラったらまたご本読んでたのね。でもでも、それよりもーっと面白い事があるのよ」
「面白い事?」
「そう!あのね」
「ちょーっと待ったぁ!!」
「うわ!」
キャンサーが何か言いかけたそのとき、突然の窓からの来客でライブラは驚き、また椅子に座りなおす羽目に。
もちろん腰を抜かしたせいです。
窓から飛び込んできたのは、動物の耳と尻尾が生えた元気いっぱいの少年。
「レオ!私のライブラになんてことするの!?」
「うるせー!この俺様を差し置いて、面白れぇことなんて許さねぇぞ!!」
「…『私の』っていうのが気になるんだけど…」
ライブラは苦笑しながら話を促します。
「それで?キャンサーちゃん」
「あ、そうそう。どうせレオにも言わなくちゃいけないことだったんだけど…」
(ココでキャンサーは嫌そうにレオをちらり)
「うん」
「早く言えよ」
キャンサーはニヤリとしながら言いました。
「…あの子がね、生まれたのよ!」
「え?」
「マジか!?」
+++++
「生まれたんですってね」
「ええ」
「男の子ですってね」
「そのようね」
水色の髪をした女性の顔が緩みます。
「可愛い子だと良いわね〜」
その言葉に、長くまっすぐに伸びた美しい黒髪の女性が呆れて言いました。
「…不謹慎ですわよ、パイシーズ」
「ヴァーゴ…、こんな幸せな時くらい、頭を柔らかくしなくちゃダメよ?」
ヴァーゴはそんな友人の言葉に思わず深い深い溜息をつきました。
「でも私のうおちゃんより可愛い子なんていないわよね〜」
そう言いながら、パイシーズはいつも大事そうに持っている魚のぬいぐるみに頬擦り。
いつもの事とはいえ、ヴァーゴはもう一度溜息をつくのでした。
「先に行きますからね」
「あ、ちょっと待ってよ〜」
+++++
守護者たちが向かった先はもちろん神サマの部屋。
新しい仲間の誕生を祝しに、それぞれの想いを抱いて。
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