怖い話とか不思議な話が大好きなわけよ。
ああいうのって、皆本当だと思うの。
でも、一番仲が良いモーちゃんは、あんまり興味が無いみたい。
何を話したって『はいはい』って苦笑されちゃうんだ。
今日も一生懸命色んな話をしたんだけど、やっぱり信じてもらえなかった。
ああ、どの話なら信じてもらえるのかなぁって悩んでたら、珍しくモーちゃんがこんな事を言い出してきて。
「そういえば、こういう話は知ってる?」
「なぁに?なぁに?」
思わず、身を乗り出して聞いちゃいますとも。
「合わせ鏡の中の、十三番目の顔は自分の死に顔だっていう話」
「え!?そうなの!?」
「この前何処かで聞いたよ」
「ホントだったら凄いね!早速やってみよう!」
「あ、ちょっと待って。もしかしたら午前零時限定だったかも」
「そっか。この手の話は時間指定が基本だよね」
「だからこそ、尚更信じられないんだけどね。何も起こらなくても『時間がずれてたかも』で済んじゃうし」
「何言ってるの!せっかくモーちゃんが教えてくれたんだから、今夜早速試してみるよ!」


気軽に言ってみたは良いものの。
鏡を覗いた瞬間が午前零時なのか、十三番目の顔を見る時間が午前零時なのか。
それから死に顔って、ただ目を瞑ってる顔が出るって思ってたけど、実はおばあさんになった自分の顔なんじゃないかとか。
今の顔のままだったらもうすぐ死んじゃうって事なんじゃないかとか。
色々考えたら怖くなってきてたりして。
……。
………。
うーん、でもココはやはり挑戦あるのみ!
時間だって大体でも仕方ない。
とりあえず、時報を聞きながら鏡とにらめっこ。
ああ、たくさん並んでいく自分の顔。
八番目くらいまでは簡単に見えるけど、それより後ろってかなり見難い…。
……。
あれ?
並んでいく顔の中に、不自然な隙間がある。
もしかしてあそこって。
いち、に、さん………。
………。
やっぱり十三番目!



次の日、モーちゃんの所へ大急ぎ。
「大変大変!」
「どうしたの?」
「十三番目、何も無かった!!」
「何も?」
「顔自体無かったの。十三番目だけ綺麗に無くなってたの!」
モーちゃんは、目をパチパチさせている。
「どういう事かな。まさか、アタシ死なないのかな」
「違うと思うよ」
じゃあどういう事だと思う?
そう訊こうとしたんだけど、気付いたらアタシは暗く狭い場所で、ぬるぬるする液体の中にいた。
何が起こったのかわからない。
でも、最後に見たモノは覚えてる。
モーちゃんの口が信じられない大きく開いて、アタシに向かってきてた。
え?
これって、どういう事?
悩んでたら、ちょっとくぐもってるけどとても大きなモーちゃんの声がした。
「あービックリ。人間の噂の中には、本当のもあるものなのね」
え?
え?
聞こえ方がとても変なの。
「溶けちゃうんだから、確かに死に顔も何もないわよねぇ」
一体何の話?
「まだ聞こえるかしら?ごちそう様。ずっと前から狙ってたのよ」
そう言われて、アタシはようやく気が付いた。
溶けちゃう?
アタシが?
だから死に顔が無い?





……ああ、アタシ、モーちゃんに食べられちゃったみたい。



気を付けて、気を付けて、気を付けて。
怖い話に興味が全く無いなんて、不思議な話に興味が全く無いなんて。
実は本人がそういう世界にいるからかもしれないの。
噂話でいられるうちが花。
引きずり込まれちゃうと大変だよ。

アタシはもう、手遅れみたいだけど。
あーあ。


back


[北斗七星団](c)Nagi Oborozuki 1999>>2006 All rights reserved.