耳慣れた声が聞こえて、ルークは目を開いた。
「ルーク?」
「姉さん…。ルキは…」
目を擦りながら尋ねると、ライシャは首を横に振った。
「私が来たときにはもういなかったわ。貴方、昨日からずっと…一晩中ココにいたのね?」
その言葉に、ルークは少なからず衝撃を受けた。
「夜が明けたのか…?コレは…ルキのおかげなのか?それとも…」
ライシャは、悲しそうに微笑んで言う。
「…ルキのおかげでしょうね。もし違っても、私たちはそう信じなくちゃ…。私たちの弟は、とても頑張ってくれたのよ」
ルークは頷いた。
「アイツは…一体何にそんなに責任を感じていたんだろう…?」
「あの子には、私たちにはない力があった。それだけの事かもしれないわ」
立ち上がりながらルークは姉を見た。
「姉さんも……知っていたの?ルキが、神の声が聞こえると言っていた事」
世界が滅びると言っていた事。
しかし、ライシャは黙っていた。
特に問い詰めるつもりもなかったので、ルークはルキの言葉を伝える。
「姉さん…、ルキは幸せだったって…。俺たちのおかげで幸せだったって…。そんな…そんなの…」
「それは本当なのかしら。ルークのおかげというなら分かるけど…」
そして、ルークに聞こえないほどの声で言う。
「あの子を差し置いて幸せになることなんて、私にはできない」
ライシャは扉をそっと押した。
キイイィ…
あの時と同じ音。
そうライシャは思った。
「開く…みたいね」
「どうしてだろう。昨日はびくともしなかったのに」
ルークが驚いた声を上げる。
「儀式が終わったんじゃないかしら」
「儀式?」
「贄の儀式」
「…」
ライシャが苦笑しながら持ってきたランプで照らすと、扉のすぐ傍に階段があった。
これを下って行くのだろう。
「行くわよね?」
「当然だよ」
カツーン… カツーン…
二人の足音が響く。
階段は次第に狭まっていった。
「変な模様…」
壁や階段には、何かの模様があった。
全て赤で彩られている。
「姉さん、あそこ」
階段を下りきった所に、広間があった。
目の前には、大きな時計。
壊れた柱や、崩れた壁があちこちに散らばっている。
トン
一歩踏み入れると、異臭がする。
――ああ、これは。
ライシャは嫌な予感がした。