――僕が死なないと、世界が滅んじゃうんだ。
僕が死ねば皆助かるんだって。
どうして僕じゃないと駄目なんだろう。
人に見えないものが見えるから?
人に聞こえない音が聞こえるから?
――僕は、選ばれてしまった。
「…そうだな、選ばれた事を誇れば良い。自分は世界を救える素晴らしい人材なのだ、と。わかるか?レイリック」
「…ん…」
ディールサム家の一人息子、レイリックは俯きながら応えた。
自分に課せられた使命は、あまりに重い。
何故自分なのか、いまいち納得がいかない。
ゆえに、思わず家庭教師の男に相談を持ち掛けてみると、『誇れ』と言われた。
やはり、納得行くはずもない。
「さて、今日はこの辺で終わりにしておこう」
「先生」
立ち上がる男に、レイリックは声を掛ける。
「何だ?」
「もし、もしもだよ?先生が僕の立場でも、先生は自分を誇れた?」
「…」
男は一瞬戸惑ったように見えたが、すぐに笑顔になって言った。
「当たり前だろう」
――嘘だ。誇れるはずも無い。
レイリックは小さな溜め息をつく。
「…そっか、そうだよね。凄い事、なんだよね」
男の心中を知らず、無理に笑って見せた。
「僕、頑張ってみるよ、先生」
男は少し困惑したような顔で部屋を後にした。