「俺さ、憧れてる人がいるんだ」
ある日、プライマリーは笑顔で言った。
「憧れている人?」
何のことやら、とフェイスティーは首を捻る。
「神話に出てくる『テンダー』って…知ってるか?」
「…知らない…」
ああー、やっぱりなーと言いながら、プライマリーはゴロンと寝転がった。
「ホントかどうか知らないけど、神に…ルインに逆らって罰を受けたって」
フェイスティーが眉をひそめる。
「罰を受けた奴が憧れなのか?」
「罰を受けたことが憧れなわけじゃないからな?ルインに逆らったってトコに憧れるんだ」
「どうして?」
「俺もこれから逆らおうとしてるから」
「ルインに…神に?」
「そう。どうせさ、贄になる場所には行く羽目になると思うんだよ、俺。だから、とりあえずそこには大人しく行ってやる」
少し真剣な顔になり、グッと拳を握り締める。
「でも、黙って贄なんかにはならない。逆らえるだけ、逆らってやる。出来ることならそのまま死なずに帰ってきてやるさ」
それを聞いたフェイスティーが、微笑んだ。
「…ますます他の奴とは違うな…」
「…?」
今度は、プライマリーが首を捻る番だ。
けれどフェイスティーは、そんな彼の疑問には気付かないというように、顔を覗き込んでくる。
「…あ、お前、他の奴と違うと思ったら…」
「何だ?」
「瞳の色も、違うんだな」
「誰と?」
「ディールサム家の血を引く者は皆、黒・青・紫系の髪と瞳のはずなのに…お前は金の瞳だ」
そう、何故か、ディールサム家に生まれたものは皆、髪や瞳の色が大体決まっていた。
しかし、プライマリーは髪の色はともかく、瞳が綺麗な金色をしている。
本人もその事は不思議に思っていたようだが。
「ああ、コレ?なんかな。俺、特別なのかな」
「特別?」
「ま、そんなの冗談。たまたまだろ」
「そうか…」
そのまましばらくフェイスティーが考え込んでしまったので、プライマリーは勢い良く起き上がった。
「とにかく!俺はテンダーのように罰を受けるような逆らいっぷりを見せてやる!」
意気込むプライマリーに、フェイスティーはボソリと尋ねる。
「その罰を受けた後、テンダーはどうしたんだ?」
「…え?うーん、神話の中のことだからなぁ…」
えーと…と、頭を掻く。
「でも、本当にあったことだとしても、俺はテンダーは生きてると思うよ。罰を受けて、大人しく死んじゃうような感じはしなかったな」
そう言った後、慌ててこう、付け足した。
「あ、神話になるくらいだから、今生きてるとかそういうんじゃないぜ?」
「ふーん…」
微妙な反応を示すフェイスティーに、今度はプライマリーが尋ねた。
「フェイスティーには憧れの人っていないのか?」
「憧れの人?」
「別に神話とかじゃなくても良いよ」
すると、こんな事を言い出した。
「今まではいなかったけど…」
「けど?」
「最近は、普通の人間…かもしれない」
「はぁ?…お前ってホント、面白い事言うよなぁ…」
少々呆れた顔をしながら、プライマリーは思い切り伸びをした。




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