たいした緊張も何もなく、いつもと変わらない朝が来る。
しかし、家の中はバタバタとしていて落ち着きがない。
両親は、たくさんの煌びやかな装身具を準備していたが、プライマリーはそれを否定した。
自分の意志とは別の事を望むような神の為に、自分を飾り立てる必要などない、と。
けれど、あまりにしつこく言うので、仕方なく一つ。
何の飾りもない細い金の腕輪を右腕につけた。
他は、いつものまま。
ただ、冬とは思えないほどの薄着で。
何故か、全く寒くない。
贄の力だろうか、とも思う。
そんな力が働いた所で、何のありがたみもないが。

 騒がしい家内に反し、自分は驚く程落ち着いていた。
本当は気付かないだけで、とても緊張しているのかもしれない。
だから寒さも、全然感じないのかもしれない。
それでも、自分は落ち着いている、と思っていた。
絶対に抵抗してみせる。
その強い思いが、プライマリーを、自分は冷静だと思わせていたのかもしれない。

 

時間がくるまで、自分の部屋にいることにしたプライマリーは、扉を開けて驚いた。
「フェイスティー…お前、何でこんな所に…!?」
そう、部屋の中にフェイスティーが立っていた。
「ずっと姿を見せなかったから心配して…、でも…なんで…」
何を言おうかと、言葉を探すプライマリーだが、対するフェイスティーはハッキリと言った。
「プライマリー、俺はお前を殺したくない」
「え?」
あまりに唐突で意外な言葉に、プライマリーは目を瞬かせる。
「お前は他の贄と違うから、俺はお前を殺したくない」
「り、理解が出来ないんだが…」
プライマリーは混乱したが、フェイスティーはそのまま続けた。
「だから、俺はお前を死なせない為に、お前たちが『神だと思っていた』奴を殺しにいく」
「フェイスティー…!?」
「知っていたか。人間は、勘違いをしている。贄を求めていたのは、神ではないんだ」
「どういう…ことなんだ…?」
「インタリムはきっと、神の立場を望んでいる…」
そこで、ふっとフェイスティーの姿が消えた。

「な、何なんだよ…。贄を求めているのがルインじゃない?インタリムって…?フェイスティー、お前…」
一体何者なんだ?
出会った時からの疑問は、今また大きく膨れ上がった。
普通じゃない。
普通であるはずのない彼は、一体何者なのか。




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