暫しの後、フェイスティーが口を開く。
「…悩んでいたんだ」
「は?」
「今までの贄たちは、『大切なモノ』の為にすすんで贄になった。それが俺にはわからないから」
それを聞いてプライマリーは少し首を捻った。
空を一度見て、フェイスティーの方に向き直る。
「…よくわかんねぇけど…、お前には『大切なモノ』が無いって事か?」
「!」
いつかの言葉を思い出す。
『守りたいものはあるか?』
そんなもの、自分には無かった。
「そう…かもしれない」
自分の守りたいものも、そう思う気持ちすらも浮かばない。
俯いたままになるフェイスティーを見て、プライマリーはちょっと悪い事を言ったかな、という気分になった。
「ま、それはそれで良いんじゃないのか?命を投げ出せるほど『大切なモノ』があるっていうのも良し悪しなわけだし」
「…そう…なのか…?」
「…多分…そうだと思う…けど……」
そのまま、今度は2人で悩みだしてしまう。
…が、そんな様子がお互いおかしくて、思わず2人で笑い出した。
「変な事訊くなよ、お前!」
「だって、長い間の疑問だったんだよ!」
2人の笑い声が、空に吸い込まれていく。