「インタリムがその男を蘇らせれば、きっと私を殺しに来るだろう。それを回避するのは流石に少々難儀な事だ」
ルインの顔が、いかにもその2人が憎いというように歪んだ。
「だから私も力を蓄える為、アイツが呼んだ贄を頂戴する事にした」
「インタリムのところへ行く前に俺が殺した奴らは…?」
「無論頂いたよ。呪文で浄化されていない体は少し味が落ちたが。おかげでまだ、あの男が蘇らないというのにこの力だ」
そして、フェイスティーの顔を見て、微笑んだ。
「お前は本当によく働いてくれた」
ルインの周りに、光が見える。
フェイスティーが彼女に始めて会った頃より、確実に大きくなった力の象徴。
自分もそれに加担していた。
「…」
「どうした。真実がわかって、私が憎くなったか?私を殺したくなったか?」
煽るルインに対し、フェイスティーは十字架を目一杯握り締めるばかりだ。
憎かった。
殺したかった。
騙されていた事も、これから彼女が、プライマリーの命すら喰らおうとしている事も。
けれどまだ、フェイスティーには真実が信じられなかった。
だがそれは、ルインの次の言葉によって信じざるを得なくなる。
「殺したければ殺せば良い。ただの人間風情は、この私に触れる事すら叶わないのだから」
ついに、フェイスティーの中に確信が生まれる。
――コイツも、ルインも『真実』を知らないのだ、と。
静かに、十字架を構える。
「…インタリムは正しかった」
「…何?」
「お前は何も分かっちゃいなかったんだ」
「…」
「お前こそ神様気取りで、俺のする事をまともに見てやしなかったんだな」
「…何が言いたい?」
ルインが眉をひそめる。
「俺がどうしてインタリムを殺せたと思う?…ただの人間風情が」
「あの女が私よりもはるかに下等だったからだろう。そうで無ければアイツも仮にも有翼人(ツバサアルモノ)、お前如きに殺されたりなど…」
「違う」
ズッ…
インタリムの時と同じだった。
簡単に、ルインの体を貫けた。
ルインの余裕の笑みが、驚愕に変わる。
「な…なんだと…?そんなはずは…」
「全てお前が根源だったのか…ルイン!」
あまりの怒りに、手が震える。
「貴様…何故…!?お前は人間…。少し私が力を与えただけの…」
ルインの腕が、宙を掻いた。
「本当に何も知らないんだな」
「有翼人は…いつでも力を放出している…!だから人間が我々に触れたりすれば…」
「生きてはいないだろうな」
「それならば何故!」
ルインを睨みつけながら、フェイスティーは大きな声で言った。
「…俺も…有翼人だから…!!」
「!!」
フェイスティーの背中に、純白の大きな翼が生えた。