ルークは、じっとルキを見ていた。
この前のライシャと同じだ。
嘘をついているとは思えない。
けれど、世界が終わるとは。
そして、それを止める為の贄にうちが選ばれたとは一体どういう事なのか。
「…贄となって、何処かに行って儀式でもやれっていうのか?」
ルキが頷く。
「ただし行くのは、兄さんや姉さんじゃなく…僕だ」
「……何言ってるんだ」
「僕が行くよ」
ルークは呆れた顔をして、頭を振った。
「そんな冗談にお前が付き合う義理は無い。俺が今すぐ教会に行って贄なんて必要ないって言ってきてやる」
「冗談なんかじゃない。全て真実だ。そして、教会なんて関係ない。これは全て神の意思だ」
ルキの目は、とても真剣だった。
彼が、こんなに真剣に自分に何かを言ってきたことは今まであっただろうか。
「…ルキ、何があった?誰に、何を言われた?笑わないし、全部信じるから言ってみろ」
しかし、ルキはその問いには答えずにこう言った。
「兄さん、コレだけは覚えておいて。人間は全てが終わった後に気付く。―――遅かった、と」
そのままルークに背を向ける。
「だから兄さん、貴方は後悔しないで。僕のようにはならないで―――」
弟の身に何があったというのだろう。
世界の終末が、本当に訪れるというのか。
それがもし本当で、もしディールサム家の誰かが贄になることによって防げるのだとしたら。
「……わかった、俺が行こう。それが当然の結論だろ?」
ルキは、首を横に振るばかりだ。
「弟や姉さんにそんな事させられるか。こういうことはやっぱり長男の俺がやらなくちゃな」
「駄目なんだ…。僕じゃなきゃ駄目なんだ…」
「誰が決めたんだ、そんな事?」
「兄さんには、神の声が聞こえる?」
多分こんな事は、他の誰も知らない。
ルインを崇めている人間たちだって、誰も気付いていない。
本当に世界が滅びるなんて、本当に贄が必要だなんて。
その証拠にほら。
教会の人たちが人形(ひとがた)を準備してる。
『贄のようなモノ』を供えればそれで良いと思ってる。
それも仕方ない。
まさか、世界を創造した神が本当に贄を望むなんて。
まして、それを与えない事により世界を滅ぼしてしまうなんて。
神を崇めている人間が、そんな事を考えられるはずも無い。
本当の本当に世界の終わりが迫ってるなんて、そんな事誰も思ってない。
「神の…声…?」
頭の中に入ってきた耳慣れない言葉。
弟がたった今口にした言葉。
「僕には…聞こえる。僕は、神に選ばれたんだ」