学校の窓から見える街は、神祈祭に向けてどんどん華やかに飾られていく。
けれど、ルークの心は沈んでいた。
――神の…声…。
弟には、ルキにはそれが聞こえると言うのだ。
そしてその声が、彼を贄として呼んでいると。
無論、信じられるはずは無い。
しかし、冗談を言うタイプとは思えない弟が、あんなに真剣に言ったのだ。
『贄を差し出さなければ世界が滅びる。僕が行く』と。
数日前の、ライシャの事も気にかかる。
ルキが、母を殺したと言っていた。
ルークは、その場にいなかったのだ。
だから、それがどんなに信じ難い話だったとしても、完全に否定する事が出来ない。
まして、父や使用人たちの態度があのようなものだったのだ。
少なくとも、ただの事故ではなかったはず。
――何を何処まで信じりゃ良いんだか…。
思わず頭を抱えてしまう。
大切な、大好きな姉と弟にこんなに苦しめられる事になろうとは。
まあ、人と距離をおく癖のある弟と深く接触を図れたという事実に関してだけはやや感謝しなくも無いが。
こんな状態で、授業に身が入るはずも無かった。
そんな風に悩んではいるものの。
ルークの姉と弟に対する態度はいつもと変わらなかった。
今日も帰り際にルキにアタックを仕掛け、校門に寄りかかるようにしているライシャの鞄を取り。
何事も無かった。
いつも通り。
それを、振舞っていた。
この2人は自分が支えていかなければいけないのだと、そう思っている。
世界の終わりなど来ないことを、何とか証明しなければいけない。
ルキが母親を殺した等という事は悪い夢だったと、何とか説得しなければいけない。
――どうやって?
愚問だった。
わかれば何も苦労は無い。