今度は、ルークの部屋だった。
ルキが、夕食の後に訊ねてきたのだ。
「…どうした、ルキ」
自然、ルークは身構えてしまう。
何か、重要な事を言われるに違いない。
ルキの、そして部屋全体の空気がそう言っていた。
しかし、ルキの言葉から出てきたのは意外な言葉。
「…おやすみ、兄さん」
そして、部屋を出て行こうとする。
あまりにあっけない言葉に、ルークは一瞬戸惑った。
けれど、このまま弟を部屋に行かせては行けないと思った。
「1人じゃ、ないからな。お前には姉さんも俺もいる」
そう言うのが、精一杯だったが、ルキは振り返った。
「ありがとう、兄さん」
どうして自分は無力なんだろう。
姉弟の中で、何故自分だけ掛け離れた髪や瞳の色をしているんだろう。
何故、父さんは俺の事ばかり気にかけていたんだろう。
………どうして、ルキはいつも俺を頼ってくれないんだろう。
俺は、お前は、……1人じゃない。
「そんな事を言うな!」
気付けば、自分の机を思いっきり叩いていた。
いきなりの兄の態度に、流石にルキも少し驚いた顔をする。
「ありがとうじゃない!わかってない!」
そこで、無表情のままに出る『ありがとう』は、本当に心から出たものなんだろうか。
「兄さ…」
「ルキ…たまにはちゃんと頼りにしてくれよ。俺は…」
俺はお前の兄でいる為に、お前に頼られたい。
そう叫びそうになる自分に気付いて、ルークは口篭った。
そんな、ただの押し付けのような兄なんて。
「俺は…兄弟…なんだから…」
ようやく出たその言葉に、自嘲気味に笑う。
結局は、自分の事しか考えていなかったのだ。
頼られることで、自分の存在を主張していただけ。
そうしないと、自分が消えてしまいそうな気がして。
ルークが俯いていると、ルキも下を向いたまま言った。
「…明日………僕は行くよ」