自分だけ名乗るなんて…、と思ったレイリックも少年に言う。
「そういう君は、何て名前なんだよ」
「俺はフェイスティー。残念ながら、『苗字』も『セカンド』も無い」
レイリックは、眉をひそめた。
「そんな馬鹿な事って…」
すると、フェイスティーはニヤリと笑みを浮かべた。
「あるんだよなぁ。世の中には納得のいかないことって」
「…!」
多分彼は、自分が思っているのとは違う意味で言ったのだろうが、何だか心の中を見透かされた気がする。
レイリックは思わず言葉を詰まらせた。
フェイスティーは、笑んだままレイリックの顔を覗き込む。
「…で、どうなんだ?お前は」
「…どうって…」
「死にたいのか、死にたくないのか」
「そんなの…」

――そんなの決まってる。
死にたくなんてない。
死にたくなんてない…けど。

「そんなの?そんなの…何だよ」
「死にたくないけど…僕が…やらなくちゃ…」
その言葉を聞いてフェイスティーが顔を曇らせた。
「何だ、お前もか」
「え?」
「お前もそういう英雄気取りなのかって言ってるんだよ」
頭をぐしゃぐしゃ掻いて面白く無さそうに続ける。
「あーあ、つまんねぇ。良いよ、ハルト。お前はそのまま悩んでな」
「なっ…!」
突然セカンドで呼ばれた上、突き放されるような言葉を言われ、レイリックは憤った。
しかし、目の前にいたはずのフェイスティーの姿は突然消えていた。
「…何だったんだ…今の…」
道には強い風が吹き続けていた。




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