――父さんも母さんも泣いちゃって、もう僕を見送れる状態じゃない。
先生も、もう一ヶ月以上来てくれない。
僕は、僕はこのまま一人で贄として…。
…嫌だな。そんなの淋しすぎるよ。
悲しすぎるよ。
どうしてこんな事になったんだろう。
もし、もしも僕がこのまま、贄にならずにずっとココにいたら?
本当に…世界は滅びるの?

 レイリックがそんな事を考えていると、後ろから声を掛けられた。
「色々悩んでいるみたいじゃないか」
振り返ると、全身を深い緑色で包んだ少年――フェイスティーが立っていた。
「…フェイスティー?」
「おー、覚えてたか」
フェイスティーはレイリックの前に立つと、ふふんと笑った。
「今更怖気付いたのか。お前は英雄なんだろう?」
そんな事を言われて、当然の如くレイリックは不機嫌そうに言う。
「何の用?」
不機嫌な事なんてお構い無しに、フェイスティーは楽しそうに答えた。
「なんだか怖くなっちゃったハルト君に、警告に来たんだ」
「警告?」
「今、お前は心が揺らいでるな。僕が生きていたらどうなるんだろうって。本当に世界が滅んだりするのかなって」
「…」
黙り込むレイリックを尻目にフェイスティーは窓に手を掛けた。
「お前がそんな風に考えたりするから、もう世界は滅び始めてる」
「…え!?」
「窓の外を見てみろよ」
慌ててレイリックが窓に近付くと、初めてフェイスティーに会った日の何倍もの強い風が吹き荒れている。
屋敷の中は何ともないのに、地面も唸りを上げて揺れているようだ。
「……何…これ…」
「わかるだろう?この後に起こり得る事が」
レイリックの体が震えた。
「全部お前のせいだ。お前のせいで世界は終わりを迎える」

――僕の…僕のせいで…?
こんな風に世界は滅んでしまうの…?

 何処かのオブジェが倒れる音がする。
誰かの叫びが聞こえる気がする。
「もうやめてよ!行くよ!!僕が行けば良いんだろ!?」
涙を浮かべてレイリックが叫ぶと、嵐も地震もピタリと止んだ。
「…じゃあ、行くか」
フェイスティーが差し出す手を、涙を拭いながら握った。




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