「何だ?」
「迢さん!」
侵入者5人、団員共に慌てる中、天井から声が聞こえてきた。
「遅くなってすまない。迢、大丈夫か」
その声を聞いて安心したのか、迢がガクリと膝をつく。
「…何とかな」
天井から降りてきた禾が、その肩を支える。
そう。
朝基との間の壁はともかく、団員との間にも壁が下りてきた理由とは、禾が姿を見られないようにする為のモノだったのだ。
ココまでくると、禾の根性も天晴れである。
琥香は禾の声を聞いて安心し、団員たちに指示を出した。
「朝基がいる以上私たちは近付かない方が良いわ」
慧史たちは首をひねったが、緊急事態という感じだったので素直に従う。
「こーんなモノ用意しておくなんて、几帳面〜」
朝基は下りてきた壁をペシペシと叩く。
仁紫は、そんな彼を――あまりそうは見えないが――心配そうに見ながら言う。
「大丈夫、なのか?」
すると朝基は、先程までと同じ、瞳が隠れるような微笑を浮かべて振り返り、咳を一つした。
4人が慌てて近寄るが、それを片手で制す。
「――平気。俺は、コレくらい」
そして、もう一度壁を向いて言う。
「迢、今日はもう帰るよ。挨拶に来ただけなんだ。――また、これからよろしくって」
その言葉に、迢の表情が少し険しくなる。
「何が『よろしく』だ。貴様ら、俺様の寝ている間によくも!」
迢が何かを言う前に、窓の外から偉そうな声がした。
言うまでも無く旨篤である。
「不穏な空気を辿ってみれば貴様らとは。覚悟は良いな…?」
バチバチッ
旨篤の手の中に稲妻が生まれる。
それを見て朝基が苦笑しながら首を振った。
「やれやれ…旨篤は相変わらずだな…。智弥(ともや)、アレを」
すると、5人の中で一番大きな男が懐から丸い物を取り出し地面にぶつけた。
ボンッ
いわゆる煙幕だ。
「小賢しい!」
旨篤は窓からその中に飛び込んだが、もう5人の姿も気配も無かった。
チッと舌打ちする旨篤の横で、いつのまにか壁の前に立っていた夜栄が言う。
「逃げるぞ…。どうする?」
壁の向こうで迢が静かに言った。
「深追いはするな」
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